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七五三の着物のこと

子供時代のアルバムの中に、七五三の三才のお宮参りの着物姿の私がいます。その着物は父方の祖母が用意してくれたものだそう。牡丹色地に牡丹・菊・梅などの花づくしの着物の袖から白地に色とりどりの菊花紋の着物が見えます。

以前に、七五三に関わる着物とその儀礼の持つ意味について調べたことがあります。
七五三は江戸後期よりみられるようになった儀礼の名称です。江戸後期からあらわれはじめ、定着したのは明治以降といわれています。七五三の名称にみられる「七」「五」「三」の数字は、この年齢に子供の儀礼が多く行われていたことと関連があるそうです。例えば「三」は三歳に行われていた髪置の儀礼、「五」は五歳で行われていた袴着の儀礼、「七」は七歳で行われていた帯解の儀礼がその代表的なものです。子供の着物は、成長にともになって産着→一つ身→三つ身→四つ身という流れで進み、このうち一つ身と三つ身には付紐があり、四つ身ではこれがなくなり帯を締めます。室町時代から行われるようになったとされる帯解は、帯落としともいわれ、幼児の着物(一つ身、三つ身)の付紐を取り、初めて帯を締める祝いです。儀礼にみられる着物の変容は、「子供の成長の段階をその着物によって象徴しようとした。」ものであるとし、「成長段階を確認」する意義を見出す研究報告があります。
最も、現代においてはその意義は失われ、子供の姿を記念に残したい非日常の衣装としての着物があるようですね。

参考文献
・田口祐子、2015、現代の産育儀礼と厄年観、岩田書院

ところで、先述の三才の時の着物は今も私の箪笥の中にあります。先日、牡丹地の着物と白地の着物を虫干しを兼ねて寝室のハンバーラックにかけておいたものが、朝起きぬけに目に入りました。着物を着た三才の日の記憶は全くないのですが、私の健やかな成長を願っていた家族と、その家族に大切にされた子ども時代の私の記憶がよみがえるようで、あたたかい気持ちになりました。着物にはそんな力もあるんだなぁ~、と気づかされた七五三の着物がたりです。

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