店構えのいい経師店のお話
思い出のある手持ちの書と思い出のある着物の裂をアップサイクルデザインした表装の制作をお願いしたいと思い、いくつかの表具店を調べましたところ、横浜のがんき通りにある木村経師店さんに行き着き、書と裂を持ち込んでお見積もりをしていただくことになりました。
表具店と経師店の違いについてはここでは横道すぎますのでおいておきますが、数あるお店の中から私はまず、このお店の店構えにピンときました。もう、絶対に私の好きなお店だと確信したのです。
店構えの何がいいかというと、何といっても掃き出し窓の建具です。木枠といいガラスといい窓枠といい全て美しいです。ガラスの木枠は曲線部分もあり、取り替えるのに大変手間がかかるためガラス職人泣かせだそうです。そして最も美しいのは日除け用の竹製簾で、文字が浮き出るように竹が彫られています。初めてお邪魔した日は猛暑のお昼近くでしたので、木村さんは簾を下ろしてくださいました。室内側かる見る竹製簾は、簾職人さんの確かな技が間近に感じられてとてもよい眺めでした。建具好きが見にくるそうですがわかります〜!
そして、店構えに負けないくらい店内の作業場は素敵なことになっています。
大きな作業机と掛け軸等を吊るための大きな壁面の存在感に負けていない、建材はどれも無垢で、時間がいい味を出しています。建物は1954(昭和29)年建てられたそうですのでおよそ70年前にくらいでしょうか。その空間の中に、使い古された道具や材料が雑然と整然のちょうど中間くらいの感じにほどよく収まっていて、これもまたいい味を出しています。末長く保存してほしい建物です。
お見積もり後、私のややこしいリクエストに横浜マイスター職人である木村さんは快くお受けくださることになり制作をお願いしました。
完成するまで何度かお邪魔しました。作品の進捗ももちろん楽しみでしたが、お店にお邪魔して、建具や作業場を拝見するのも楽しみでした。できあがった作品がこちらです。ありがとうございました。職人さんの腕はもちろんですが、店構えのいい経師店には何度もお邪魔したくなる、建物がたりです。
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