大島紬キラーコンテンツ発祥の集落を訪ねてみました。
多くの着物好きにとって特別な存在の大島紬。フランス・ゴブラン織、ペルシャ絨毯、と並んで世界三大織物と言われているそう。どんな気候風土の地で織られてきたのか、いつかその紬の里を訪れてみたいと思っていました。この夏に奄美大島を旅し、大島紬と言えば龍郷柄!と言われるその柄の発祥の集落を歩く機会を得ました。
まずは奄美大島北部にある龍郷町の役場へ。役場の敷地を取り囲む塀には大島紬のアイコン的存在の龍郷柄と秋名バラ柄があしらわれています。庁舎に一歩足を踏み入れると足下のマットに龍郷柄、壁の額装も龍郷柄。そして受付の女性のベストも龍郷柄!なんていうおもてなしぶりでしょう〜。集落ではタイミングがよければ機織りの音が聞こえるかもしれませんよ、と言われ期待で気分が一気にハイ!
町役場が先頭に立ち、大島紬を観光資源に活用していこうとしている意気込みを感じました。
町にある20の集落のうち大島紬キラーコンテンツの龍郷柄発祥の嘉渡集落。どんな風景があり、どんな住宅が建ち、どんな音が聴こえ、どんな空気感なのかなどなど、是非とも足で歩いて五感で感じてみたいと思いました。
嘉渡集落は、県道81号線にある龍郷柄発祥の地碑が入り口の目印。集落に入り車を走らせていくと龍郷町立大島紬織工養成所が目に入りました。中を覗いてみると機織りの音が!その部屋を開けてみると数人の女性が機織りしているではありませんか〜。恐る恐るお声かけしてみたら見学はできないとのことでしたが、お邪魔にならないよう少しだけ見学をお許しいただきました。まさに夏大島、白大島の機織り中で、それぞれ触らせていただきました。夏大島は透けるように薄くて拠りが強い糸のサラッとした手触り、白大島はツルツルできめ細かいしなやかな手触りでした。
機織り中の柄はもちろん龍郷柄!手を止めて説明してくださった女性によると、目立つ風車のモチーフの四角形が特徴として紹介されますが、実は風車でない方のソテツの葉のモチーフの四角形が龍郷柄の特徴だとのこと。縦と緯の糸の柄の微妙なズレを修正しながら織る作業は機械化できないとおっしゃっていました。
龍郷柄発祥の地なのになぜ集落名はネーミングされなかったか?聞いてみたのですが、確かな答えはありませんでした。
養成所を出て集落を車で走ると静かな海の小さな漁港に出ました。車を停めて集落内を歩いてみました。残念ながら住宅からは機織りの音は聴こえませんでした。
養成所の女性のお話では、現在、機織りをする女性は若くても60代で、今はもう養成所に入る人もほとんどいないとのこと。世帯数150余りのこの集落で機織りをする女性はどのくらいいるのでしょうか。
大島紬龍郷柄発祥の集落には静かな海に面した漁港があり、海から続く幾つもの不規則な小径を挟んで住宅が並び、鳥が鳴き、花の蜜を吸う蝶が飛び、人の話し声がたまに聴こえていました。
知人や親戚から着物を譲り受ける際、持ち主はその着物の染織技法について記憶が薄れていることが少なくない中、大島紬については必ずと言っていいほど、これは大島、と断言されます。ある年代以上には特別な存在だからだと思います。
譲り受けた私の大島紬たちは、それぞれに特別な大島であったと想像します。大切に着ていこう、大島紬龍郷柄発祥の集落を訪れて思った着物がたりです。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?