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1.序論 1-1.研究の背景

研究の背景はこんな感じです。

1-1.研究の背景
現代の和風建築の壁面に日本の伝統ある室内装飾織物を見ることができる場合がある。2つの事例をあげる。1つ目の事例は2005(平成17)年4月に国の迎賓館として開館した京都迎賓館である。内閣府迎賓館京都事務所発行のパンフレットによると「日本建築の長い伝統の粋と美しさを現代の建築技術と融合させる「現代和風」の創造を目指して設計された」という。大臣会合や立礼式の茶会に使用される「夕映の間」の東西の壁面には『比叡月映』と『愛宕夕照』という龍村美術織物製の綴織作品が飾られ、その周りの柱・長押・回り縁で囲まれた壁面も織物が貼られている。2つ目は横浜能楽堂である。中世・室町時代に生まれた日本の伝統芸能である能を演じるための能舞台は、明治初期までは神社の境内や大名屋敷の庭に造られた。近代以降は能楽堂という近代建築の内部に設置されるようになった。横浜能楽堂は、1875(明治8)年に旧前田藩の上根岸屋敷の庭に造られた能舞台を移築・復原し、1996(平成8)年に能舞台を有する横浜市の公共施設として竣工した。鉄筋コンクリート造の現代の建築と日本の伝統技法による内部空間を融合した現代の和風建築である。装束の間の地袋には「有栖川錦」、舞台の見所扉には「疋田りんどう錦」、歩廊天井には「いちご裂(孔雀)」等の伝統的な織物が貼られている。
日本では前近代より、掛け軸や屏風の表装、畳の縁等に織物が使われるが、近代以降は壁等に織物が張られるようになった。「川島織物の二代目川島甚兵衛は、やがて西洋化していく建築を想定しながら、日本の様式美で空間を飾るには伝統に裏打ちされた染織品が不可欠であると確信した」(石黒、井、2012、4)という。

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