もの忘れがひどくて心配です。(『おはなし仙人の勝手に人生相談』その12)

相談者:最近、もの忘れがひどくて、自分でも心配になります。何かいい方法はないでしょうか?

おはなし仙人:わしも、もの忘れはしょっちゅうじゃ。聞く相手を間違えたね。

まぁね、小さなことは忘れてもくよくよしないことじゃな。自分の根本のところを忘れなければ大丈夫じゃ。もの忘れがひどいっていうことを忘れていないのだから、まだ大丈夫じゃ。それすら忘れてしまうようなら心配じゃがな。

何でも覚えている、というのも辛いかもしれんぞ。昔、誰々にあんなことされた、こんなこと言われた、なんていつまでも覚えているヤツがおるじゃろ。カフェなんぞでグチグチ言って、友だちを困らせているのを見かけるじゃろ。嫌なことを思い出して腹を立てるのは、その嫌なことを何回も経験するのと同じことじゃ。嫌なことはきれいサッパリ、忘れてしまうに限るね。いいことは覚えておきたいものだがね。

イヤなことをずっと覚えている人間というのは、そのイヤなことを何度も頭で繰り返すから、余計に記憶が強化されるんじゃろうね。学校で習う漢字や英単語だって、何度も復習して覚えるのと同じことじゃ。頭の中に漢字や英単語が増えるのは結構なことかもしれんが、イヤな思い出がどんどん増えるのは勘弁だね。

それより、覚えておきたいことを何度も頭の中で繰り返すほうがいいだろうね。何を覚えておきたいのか、自分で意識して決めることが大事じゃ。覚えておきたいほどのことがないなら、どんどん忘れて次に行くのもありじゃろうね。小さなもの忘れでくよくよしていても損ってもんじゃよ。自分の家を忘れて帰れなくなったり、ごはんを食べるのを忘れてやせ細ったりしては困るじゃろうが、それなりに毎日を暮らせているならとりあえずよし、としておくほうが、気がラクってもんじゃよ。

(おしまい)

※架空の人物「おはなし仙人」が架空の人生相談に答えるシリーズです。
筆者はおはなし仙人と同一人物ではありません。

※なお、おはなし仙人は修行とお昼寝でいそがしいため、コメントをいただいても返事ができません。コメント自体は歓迎で、いただいたコメントはおはなし仙人にお伝えしておきます。

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