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第10話「潮彩の僕たちは宛てのない道を歩く」

北城美鈴(きたしろ・みすず)二十歳。私が大人の成人式を知ったのは小学生のときだった。教えてくれたのは二つ上の兄である。どこでそんなことを知ったのかは言えないと、兄は私に話してくれた。


それを前提に話してくれたと言える。


正直言って、その情報源は気になったけど、この際そこは無視しよう。兄は口が硬い人だと知っていたから教えくれないと思っていた。当時、十二歳だった私へ、兄は目を輝かせて話した。

そんなにも魅力的なのか、当時の私にとっては、成人式なんて遠いイベントとしか思えなかった。二十歳の自分を想像しようにもボヤけた輪郭ではっきりと浮かばない。


強いて言えば、この小さな胸が大きく育つか心配だった。この頃、胸にコンプレックスを持っていた。母親は必ず大きくなると言ってくれたが、大して大きくもない胸の母親から言われても何ら説得力はなかった。


「お兄ちゃんは、二十歳になったら行くの?」と好奇心を持っていた私は、椅子に座る兄へ訊いた。


あの頃、私たちは同じ部屋だった。私が中学になったとき、別々の部屋に分けられたけど。


「もちろん行くさ。話しを聞くだけでワクワクするよ。子供時代から大人時代へ行けるんだぜ。お前も絶対、参加した方が良いよ。でも、三つのルールを守らないといけないんだ」兄はそう言うと、スリーピースを私に見せた。


三つのルールを守ってこそ、大人の成人式へ参加する資格があると説明してくれた。


一つ目のルールと二つ目のルールは守れそうと思った。だけど、三つ目のルールはどうなんだろうか。小学六年生にもなれば、三つ目のルールの意味は理解できる。

だけど、私にとって好都合かもしれない。何故なら、三つ目のルールに関しては、まだ私の中では穢らわしいイメージがあったからだ。


三つ目のルールとは、大人の成人式へ参加する条件として、必ず男は童貞であること。そして、女は処女でなければならない。この三つのルールを守らないと、その本人には大人の災いが降り注ぐだろう。


私は今日の成人式を迎えるまで、ずっと処女を守っていた。そして、数時間後に始まる大人の成人式を心から楽しみにしていたのだった。


第11話につづく

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