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第15話「潮彩の僕たちは宛てのない道を歩く」

数字を意識してしまうから変に勘違いするかも。私は綿の大きくなった粉雪を数えながら思った。十九歳から二十歳と、一つ数が増えただけなのに人は不思議と意識してしまう。

何も変わっていない。私は今だに処女だったし、この先もずっと経験しないかもーーと考えることもあった。


人生において、数はどこかで潜むように関係していた。私の生まれた日も数で決められている。行事とかも数は潜んでいた。カレンダーなんてもっとも数で構成されていると言えるだろう。

世の中の誰もが数は付きまとう。そんな表現が一番お似合いでしょう。

今、現時点で成人式も数を寄り添っている。幼い頃から数えられた大事な数と言える。日にちという数を頭に組み込まれて、私は今夜の大人の成人式へやって来たのだ。

あの人は知っているのかな。もしかしたら同じ目的で来たのかも。こんな時間、二階で居るなんて不思議だわ。さっきも慌てて向こうに行ったし。


そんな風に彼女が考えているとき、僕と桃香は非常口からひと気のない踊り場に隠れていた。雑音が不思議と聞こえない踊り場は、屋上へ続く階段へ繋がっている。桃香は声を潜めて、僕の手を離すと階段下にある空間へと歩き出した。

只で冴え薄暗い踊り場なのに、桃香は更に薄暗い階段下の空間へ移動する。僕はなんとなく、屋上へ上がれる階段と桃香の後ろ姿を見つめた。これから起こる出来事に、少しの期待を心に思いながら。


音のない踊り場に桃香の足音と、僕の息づかいだけが耳鳴りのように聞こえていた。


第16話につづく

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