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【note創作大賞2024】「ごえんのお返しでございます」

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note創作大賞2024参加中の「ごえんのお返しでございます」をまとめています。 スキやSNSでの拡散、ありがとうございます。応援よろしくお願いします。
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2024年6月の記事一覧

「ごえんのお返しでございます」3話 黒い糸①

 七月も半ばになり、あと十日ほどで終業式。梅雨がようやく明け、まぶしい太陽にさらされる季…

「ごえんのお返しでございます」3話 黒い糸②

 土曜日の昼下がり、僕は自室でぼんやりと過ごしていた。宿題なんてすぐに終わってしまって、…

「ごえんのお返しでございます」3話 黒い糸③

 荷物を発送して、さらに気温が上がった昼下がりの道を歩く。  足取りが重いのは、暑さのせ…

「ごえんのお返しでございます」3話 黒い糸④

 大輔と渚は、ずいぶん先に行ってしまっていた。慌てて追いかけていく。 方角を誤らないのは…

「ごえんのお返しでございます」3話 黒い糸⑤

 引き返してきた僕のことを、糸子はちらりと見上げた。いつもと違う。そう思ったのは、彼女が…

「ごえんのお返しでございます」3話 黒い糸⑥

 一緒に行く、と言ってくれた大輔の予定に合わせた、木曜日。肉のフジワラは木曜が定休だった…

「ごえんのお返しでございます」3話 黒い糸⑦

 結局その後、大騒ぎをしていた僕たちのところに、篤久の母が血相を変えてやってきた。  何度言っても繰り返し巻いた糸がすべての指からなくなり、「母さん」と弱々しい声で呼んだ息子のことを、彼女は強く抱きしめて泣いた。  ありがとう、と何度も礼を言われたが、僕はただ黙って会釈をすることしかできなかった。 「これから篤久、どうなるんだかな」  篤久の家を後にした僕たちは、並んで商店街を歩いていた。大輔の言葉に僕が反応しないせいで、独り言になってしまっていた。  正気に戻った

「ごえんのお返しでございます」4話 きょうだいあい①

 夏休みになって、僕は糸屋「えん」に入り浸っていた。  父は仕事に行くが、専業主婦の母は…

「ごえんのお返しでございます」4話 きょうだいあい②

 店には、二日続けて客がやってきた。日がな一日店を開けていても客が来ることはほとんどない…

「ごえんのお返しでございます」4話 きょうだいあい③

 糸屋からの帰り道に、たまたま肉のフジワラの前を通りかかると、大輔がひらひらと手を振って…

「ごえんのお返しでございます」4話 きょうだいあい④

 今日は図書館での読書に熱中しすぎて、夕方になってしまった。糸屋に寄る時間もなく、すぐ夕…

「ごえんのお返しでございます」4話 きょうだいあい⑤

 我が高校の文化祭は、九月が始まってすぐ開催される。始業式が一日、文化祭はその週の土日。…

「ごえんのお返しでございます」4話 きょうだいあい⑥

 一週間ぶりの店は、相変わらずだった。埃っぽくなったりもないので、僕の存在意義がいよいよ…

「ごえんのお返しでございます」4話 きょうだいあい⑦

 遠藤の事件は、学校でも問題として取り上げられた。  夏休み中にも関わらず、緊急の全校集会を開き、「出かけるときはどこに誰と行き、何時に帰宅するか必ず告げること」という、小学生にもイマドキしないだろう注意事項を上げられて、解散となった。  兄と一緒に家出をした。  告げられた事実はそれだけだった。ふたりの間にどんな感情が横たわっていたのか、教師たちは承知しているのだろうか。  恋愛に関する嗅覚が鋭く、妄想たくましい女子高生たちであっても、実の兄とのラブロマンスは想像で