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つばめ

歩道にあるのは、つばめ一羽の死体である。

歩道に倒れているつばめの死体を見て、通り過ぎる人々は様々な反応を見せる。ちらっと視線を落しただけで、平然と去っていく者。恐ろしさのあまり、何も見なかったふりをする者。まじまじと見つめる者。面白がって死体を何度も踏みつける者。

なんと無慈悲な光景だろうか。そこに命があった動物の亡き骸があるというのに、なぜ彼らはこのような対応を行うのだろうか。人間の命と同列に扱うことは出来ないのだろうか。

人間は親しい人間が死ぬと葬式という向こうの世界へ送る儀式を行って、その後は墓というものを建てて、死後も忘れないようにするらしい。それにも関わらず、彼らの他の生物の命に対する扱いは非常にぞんざいなものだ。自分にとって何の関係もない命は、どうでも良いということなのか。

彼は私の一番の親友だった。今日も一緒に海を渡る予定だった。しかし、彼は突然死んでしまった。死体はこのように、縁もゆかりもない土地で長時間晒されている。実にむごい光景だ。私は何もできない自分に対して怒りを覚える。

そんな時、ある青年が彼の死体を見つけた。青年は、可哀想にと呟いて、彼の死体を両手ですくい上げた。そして、青年は歩道の左側にある空き地に行き、死体を土に埋めた。その後、彼は静かに手を合わせた。

何と慈悲深い青年なのだろうか。私は、このような人間もいるものだと感心した。これで彼も安心して向こうの世界に行けることだろう。この土地にいる最後の日に、私はとても良い光景を見たと思い嬉しくなった。

しかし、私は青年が次に起こした行動に目を疑った。青年は近くにいた蟻の群れを踏み潰し始めたのだ。青年は笑みを浮かべながら、次々に蟻の命を奪っていく。この土地にいる最後の日に、私は非常に不快な光景を見てしまった。

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