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アイスクリーム

銭湯の価格が520円になってから、以前ほど頻繁に通わなくなった。
500円を超えると、日常の一部ではなくちょっとしたご褒美のような扱いになってしまう。感覚的にはハーゲンダッツと同じくらいの価値になる。
(ちなみに銭湯の価格は銭湯協会によって一律に決められているので、各店で入浴料の値下げなどは出来ない。逆にいうと値上げもできないので、最近の銭湯業界はサウナや入浴後のクラフトビールなどのサービスを充実させ、利益を増やす傾向にある。)

そのため以前はジムで走り終わったら、そのまま銭湯に向かっていたのだが、最近は20km以上走った日や今日は中々良くやったぞと思った日にしか行っていない。

今日も13kmほど走ったのだが、まあこれくらいは普通だよねという感じだったので、真っ直ぐ家に帰ってシャワーを浴びた。夕方から走ろうと思っていたのだが、お昼に下北沢のB&Bで本を購入し、そのままfuzkueで読書に没頭してしまった結果、気づけば時刻は16時を回っていた。そのため走り終わって家に帰ったのが19時ごろだったので、シャワーから出たらすぐに夕飯を作ろうと思った。

蛇口を回し、勢いよくシャワーから水が放出されるのを眺めながらお湯に変わっていくのを待っていた。そういえばシャンプーが残り少なかったっけと思い、持ち上げてみると思っていたよりもだいぶ軽い。シャワーを浴びながら、ノズルを押してみるとなんとも情けない音が出るばかりで、シャンプーはほとんど出してくれなかった。

基本的に朝シャンは外せないので、明日のためにシャンプーを買いにいかなければならない。夕飯をパパッとすませ、少し本を読んでから寒空の下マツモトキヨシまで歩いた。
(ついでにいうと米もなかったので、夕飯は焼きそばに収束せざるをえなかった。)

冬の夜の散歩は嫌いではない。最近ハマっているポッドキャストを聴きながら歩いていると、どこまでも歩ける気がする。マツキヨまでもあっという間に着いてしまった。シャンプーのついでにコンディショナーもカゴの中に放り込み、さらに洗顔料、洗剤も一緒に買った。会計は3000円を越えた。人が生きるのってつくづくコスパ悪いなと思った。

米を調達するために、そのままサミットまで歩いた。11時閉店のこの店は、9時過ぎになると半額シールが貼られているものも多く、それらを眺めるのは面白かった。全然安くなってないけれど、冬を感じたくてみかんを買った。小さい頃バクバクと食べていたけれど、冷静に考えるとみかんってすごく高いなと思った。

必要なものは一通りカゴに入れたが、家に帰ってなにか甘いものが食べたいと思いアイスクリーム売り場に足を運んでいた。冬でもキンキンに冷えた冷凍庫から冷気がこちらに伝わってきた。毎年秋に販売される芋や栗などの秋のアイスが好きなのだが、今年はもう終わってしまったのかあまり種類がなかった。恒常のアイスでも良いのだが、なんとなく欲しいものがなかった。

ふと横を見ると、スウェットにパーカーを着たカップルが立っていて、彼らもアイスを選んでいた。彼らは僕と同年代くらいだと見受けられ、彼女の方は彼氏の左腕に自分の腕を回していた。それぞれ違うアイスにするか、パピコを半分こするか、いっそのこと箱のアイスを買うかということで迷っているようだった。結局彼氏が食べたいアイスがないということで、彼女が食べたがっていたパピコを半分こするという結論に至ったようだった。

結局僕はアイスを買うことをやめて、そのままレジに向かい会計をしてからサミットを後にした。なんだか家を出た時よりも夜風が厳しく感じながら家路についた。玄関を開けると暗闇の中、冷蔵庫のモーター音だけが迎えてくれた。

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