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まったく予期できない明日のために、我々は今日、何をすべきだろうか?

エフェクチュエーションと呼ばれる新しい起業理論がある。現在、世界で350を超える大学がテキストに採用し、経営学のトップジャーナルや学会で話題が沸騰している。驚く方もおられると思うが計画を目の敵にし、予想外の出来事を積極的に事業に取り入れようとする理論だ。その意味で、ドラッカーの「予期せぬ成功」を彷彿させる。

一言で言えば、エフェクチュエーションは何よりも対話を重視する。市場とも知識とも仲間とも対話をする。例えば、私が起業家研究者として起業家と対話をすると、値上げすることに抵抗を感じる起業家がとても多い。

しかし、この理論では固定観念や計画に囚われることを何より忌避する。値付けが安過ぎたとしたら、対話を元に躊躇なく値上げをすればよい。事業に自分の適性がないと感じたら、無理せずピボットさせるよう説くのだ。

こうした話をすると起業家たちは固定観念からすっと解放され、価格戦略などについて考え直そうとする。

エフェクチュエーションの生みの親は、サラス・サラスバシーというインド系の女性の経営学者。ノーベル賞受賞者ハーバート・サイモンの最後の弟子である。ちなみにサラスバシーという名は、日本でいうところの弁財天を意味している。

サイモンは意思決定を専門とし、AIのパイオニアでもあった天才だ。限定合理性の研究を為していたが、晩年は哲学に傾倒した。少年時代のサイモンの座右の銘は「戦って逃げる者は生きて再び戦える」というフレーズだったという。こうした性質は、サラスバシーのエフェクチュエーションに大きな影響を与えた。

エフェクチュエーションは起業家の学習プロセス理論でもある。

それでは果たして、学習とは一体何なのだろうか?

増田靖は『生の現場の「語り」と動機の詩学』で、教育と学習とを分けて考察している。

・教育とは“既存体制を維持する構成員の育成”を主題とし、
・学習は“個別なレベルでの学びの現象”だという。

VUCAとも言われる不確実性の高まった現在では、教育ではなく学習が求められている。既存の「教育」制度もそれに合わせて全く違うものにしていく必要があるだろう。

サラスバシー自身は、エフェクチュエーションと既存理論の違いについてこう述べている。


これまでの経営理論では、核となる企業やマーケット、あるいは経済圏があり、既にあるそうした遺物の上でどう上手く振る舞うかを問題にしてきました。

ですが言い換えてみれば、そうした遺物を“作り出す”ものではありませんでした。パイの奪い合いはしましたが、パイを作り出そうとはしませんでした。

例えば、以下のようなことに関しては、考察することすら出来ません。


・会社がまだ出来ていないのに、どうやってそこで提供するサービスの価格を決めるのか。

・ネット黎明期のような状況、産業が生まれて5年も経っていないような、どのような産業かすら明確に理解されていない産業にある企業を、どう評価するのか。

・さらには、その会社を5年前にどう評価するのか。

・かつて共産主義だった土地に、どう資本主義の根を張らせるか。さらに言えば、ポスト資本主義の世界をどう見据えるか。


こうした問題に取り組まねばならない人々が加速度的に増加してきているのです。世界全体でビジネスというものが、これまでの遺物から解放され、より創造的・起業的なマーケットへと変化しています。

映画”most likely to succeed”では、アメリカの大卒就職率はわずか5割であると述べられている。残りの者はマクドナルドでのアルバイトのような、大学を卒業する必要のない職業に就かざるをえない。

ただし、これは統計により異なっているようだ。能力に沿った職業に就けていない労働者、学歴過剰の労働者を「不完全就業者」と言うが、アメリカの不完全就業率は20ー35%だとするものもある。

ただ、いずれにせよ極めて高い数値であることに変わりはない。

ベストセラー『life shift』の著者はインタビューでこう答えていた。「これまでの社会では、教育・仕事・引退の時期がそれぞれあったのだが、次世代でそれらはすべて同時になされるようになる。子供が仕事をし、壮年でも余暇を楽しみ、老人も学ぶのだ」。

私は起業家研究所と同時に学習塾も経営させていただいている。不登校などの子供たちがなぜ将来を悲観しているかと言えば、生きていけるかどうか自信を持てないためである。

しかし勉強をし大学を卒業したとしても、職にありつけるかどうかは保証されなくなった。

大企業に就職したとしても、定年まで就職できるかどうかは極めて不透明だ。2019年、経団連の中西宏明会長やトヨタ自動車の豊田章男社長など、経済界の重鎮が相次いで、終身雇用に否定的な見解を示したことは記憶に新しい。

もちろん起業が確実さを保証するわけでもない。ならばこうした不確実性の時代に、我々はどうしたら適切な行動をすることができるのだろうか。

以下、サラスバシーの論を見ていただきたいと思う。

・・・つづきます。

表紙、逆転人生

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