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『経済人の終わり』から戦争を考える。その4。教会も資本主義もマルクス主義も失敗をした。ノマドが次の道を開く

マルクスの次となる書


教会も資本主義もマルクス主義も失敗した。

『経済人の終わり』。ドラッカーの処女作を読んでいる。

上田惇生先生の後継者、井坂康志先生はいつだったか、「処女作には著者のすべてがつまっている」と語ってくれた。

マネジメントの神が、『経済人の終わり』で記したこと。それは、教会、資本主義、マルクス主義。これらすべてが失敗した「人が人らしく生きることができる世界」。その根幹を提示することだった。

恐るべき野心作である。

これまで、史上最大の研究は『資本論』だと言われてきた。大学に籍を与えられなかったマルクスは、エンゲルスの資金援助を得て大英博物館で20数年研究に没頭した。

机上でつくられたその書が社会主義を、世界の半分をつくった。ゆえに史上最大の研究と呼ばれている。それを遥かに越えようというのだ。

「ヨーロッパとは自由と平等とを求める歴史だ」

そうドラッカーは語る。

「自由と平等は、ヨーロッパそのものである」

とも。

だが、教会も資本主義もマルクス主義も、それを実現できなかった。

教会の次に人の拠り所となるはずだった資本主義は、人間的ではなかった。

「際限なく増加する商品と、際限なく安くなる値段」
「際限なく短くなり続ける生産時間と、際限なく長くなり続ける労働時間」

「これが夢でなくてなんだというのだ」

”The end of Economic man”より私訳

カール・ポランニーは、「人は時を売って生きている」と語る。大家族が解体され核家族が出現。さらに単身者が増えているのも、時間を捻出しやすいからだと。

資本のために、である。
人のためにではなく。

「社会はコミュニティーではなくなってしまった」
「これが現代の最も革命的な特徴である」

”The end of Economic man”より私訳

経済的成功という名の下に、「自由と平等」という理想自体がかき消されてゆく。資本主義もまた階級闘争を導く、神ではない悪魔であった。

マルキシズムは自由を根絶しようとした。それこそが逆に自由であるとして。さもなければ、自由を求めて永遠に争いが起きると考えた。だが、そうできなかった。

ヘンリー・フォードの成功が象徴的だが、資本主義で最も効率が良いのは独占であり、社会主義を成立させるのも独占である。

いずれにせよ奴隷にならざるを得ない。自分らしい個性を抱きながら社会の中で居場所を見つける。そんな、人としての生活が不可能になった。

ドラッカーは述べた。

これが経済人の終わりである。

社会の崩壊は、利潤ばかりを追求した結果ではない。彼はそう分析している。ならば何だと言うのか。

マルクスにしろ行動主義にしろ精神分析にしろ、近代の知はすべてを合理的に理解しようとしてきた。だがそれは、世界を機械にしてきたことを意味する。

合理性はもともと、部族や家族内でのみ通用するものであった。西洋文明だけが全世界に適応させている。

ここに落とし穴があると本書は言う。

「理性的な秩序を体現するものは何か」と問われたなら、諸兄姉なら何を想像するだろうか。

・法律
・話し合い
・学問

そんなものを想像されよう。

だが、ドラッカーは戦争だとする。すべての戦争は、自由と平等を求めた結果の階級闘争なのだと。

世界大戦、ウクライナ危機も同様である。大戦はいつも秩序を具現化するために生じているではないか。

人の本質は理性でも秩序でもない。合理性を求めたことこそが、すべての争いの源になっていた。ドラッカーはそう考えた。

私はまだ本書を読み進めている途中で結論は見ていないが、マルクス主義の次にくるものをここで予想してみたい。

小説家アンディー


小説家の村田アンドリューがアメリカに旅立つ。3月22日、石山輝久さんが送別会を開いてくれた。

アンディーは25歳。私が会った時、美しいシルエットのセーターを着ていた。

「私はそれほど苦労していません」
「でも、自分のことをマイノリティだと思う」

アメリカで生まれ、すぐに来日。ベルギーやインターナショナルスクールで学んだ彼は、自らをそう表現する。

「孤独を感じることはあります」
「でも、その点に関しては神様に任せています」


マイノリティーの意識が自己を見つめさせる。


私はそんな風に思った。

マイノリティは外側に頼るものに乏しく、内側にいる自己を頼る。マジョリティの意識は外側を向くがために、比較に傾き人を蔑んでしまう。自分なりの何かを見つけるには、マイノリティである必要がある。

井坂康志先生が現在翻訳されている書籍、『セカンドカーブ』『ハーフタイム』のことが頭をよぎった。

人生100年時代では、寿命が50年の時代と比べ、2度目の人生を生きることができる。そのときに人は、ばっさりと二つに別れるのだそうだ。自分らしい仕事を始められる人と、一人引きこもってしまう人に。

どうすれば自分らしく生きられるか、それを探る書籍になるようだ。

私が上梓させていただいた本にある「エピファニー」という起業理論も同じだった。自分の心に従った仕事をするために必要なものが何なのか。いろいろと考え続けてきた。

「アンディーってまだ若いのに、もうセカンドカーブを生きている気がするよ」

石山さんがそんなことを言った。

先輩の望月さんに立川談志を描いた書籍をいただいた。彼は不条理を飯の種にして生きた人だ。

不条理を調理し落語をつくる。
マイノリティーの星に導かれ小説を書く。

ありのままに楽しめる合理と違い、不条理を楽しむには料理の腕や航海術が求められる。

人の核となるものは合理ではない。
不条理こそが核であって、我らはその周りを巡る惑星なのだ。

太陽の力を借りようと過去の人が星を探ったように、自らの内に北極星を探る。不条理を力とするために。

かすかな光かもしれないが、アンディーのようなノマドは、内なる光に導かれ世界を旅し続ける。

星を読め。
自らの占星術師であれ。

寂しくはあるが、豊かでありますように。
北極星になろうとしている彼の生涯が。

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お読みいただきまして誠にありがとうございますm(_ _)m
めっちゃ嬉しいです❣️

下のリンクで12月17日発売の新刊、『人は幽霊を信じられるか、信じられないかで決まる』のまえがきを全文公開させていただきました。是非ぜひお読みくださいませm(_ _)m

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2021年10月8日、新刊『逆転人生』を4名の素晴らしい方々と一緒に上梓いたしました。

内容を5名分、下のリンクより少しづつ公開させていただきます。
是非お読みくださいませ(^○^)

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下の書籍が処女作です。

歴史上、だれも端的に述べられなかったフッサールの現象学が持つ本当の意味や、とても高名な方々が半分も理解していないヘーゲルの精神現象学などを、14歳にも分かるよう解説させていただきました。

是非ご覧くださいませm(_ _)m

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書籍の紹介動画です。

お読みいただきまして、心より感謝いたしますm(_ _)m

サポートありがとうございます!とっても嬉しいです(^▽^)/