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狂言 『柿山伏』現代語訳

小学校6年生国語。狂言『柿山伏』の現代語訳です。

【柿主】
看病するのはたやすいが、お前のように柿を盗んで食う山伏など、だれが看病してやるものか。

【山伏】
そんなことを言って看病しないなら、お前のためにならんぞ!

【柿主】
お前のためにならないとは、どういうことだ。

【山伏】
酷い目に合わせてくれるわ。

【柿主】
酷い目?
そんなこと誰ができるのだ。

【山伏】
俺にできる。

【柿主】
おまえ程度の奴に、できるはずなかろう。

【山伏】
舐めたことを言ってくれるな。

【柿主】
当たり前のことを言ったまでだ。

【山伏】
おのれ! 後悔させてくれるわ。

【柿主】
するはずなかろう。

【山伏】
たった今、目にものを見せてくれる!

【山伏】
山伏というものは、山で起き、山で寝る(伏す)。

(ここで呪文を唱え出す)

ゆえに、山伏と言う。
なんと凄いものか。

【柿主】
お、おう。

【山伏】
(続けて呪文を唱える)

ときんと言うのは、一尺(30.303cm)ばかりの布切れを真っ黒に染めて折りたたみ、無造作に頭に乗せたもの。

数珠もまた、普通の数珠でなし。
むさむさした草の実をつないでしつらえた、特別なもの。

祈り唱えれば、とてつもないことが起ころうぞ。

(数珠をすりながら)ぼろんぼろ、ぼろんぼろ、
          ぼろんぼろ、ぼろんぼろ。

橋の下の菖蒲は、誰が植えた菖蒲か?

折っても、折れず。
刈っても、刈れず。

ぼろんぼろ、ぼろんぼろ。

【柿主】
か、、、帰ろう。

(と、歩き出したが、、、)

やや! これはどうしたことだ!?!?
祈りのせいか?

ヤツの方へ、もどってしまう!?

(そう言って祈りが効いたふりをし、後ろ向きに山伏のところにもどる)

【柿主】
なんてことだ!
しかし、、、こうなってしまっては、、、しかたない。

・・・・・・・
・・・・・

山伏さま。。。
私めが宿へおぶって帰りまして、看病させていただきます。
どうぞ、この間抜けの背中へお乗り下さい。

(山伏の前に背を向けて、ひざをつく)

【山伏】
よしよし。分かった。

【柿主】
つかまっていてくださいませ。

【山伏】
ふむふむ。苦しゅうない。

【柿主】
おいしょ。おいしょ。
(立ち上がる)

・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・

【柿主】
やいやいやい! 聞くぞ山伏!!!

【山伏】
むむぅ! 
なにごとだ?!

【柿主】
連れて帰るのも、看病するのも簡単なことだ。
だがな、お前のように柿を盗んで食う山伏など、こうしてくれるわ!

(山伏を振り落とし、そのまま舞台から退場する)

【山伏】
あ痛、あ痛、あ痛

(起き上がる)

やいやいやいやいやい!!!

とてもとても尊いこの山伏さまに、何してけつかる!?
どんな育ち方をしてきた!?

けしからん、アイツ!
どこかの誰か! 頼む、捕らえてくれい!

待て〜い、待て〜い、待て〜い! か・き・ぬ・し〜!!

(柿主を追って山伏も退場する)

参考文献です。

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