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イーハトーヴの夢

宮沢賢治

今、うちの塾の小学6年生たちは、教科書で宮沢賢治を読んでいる。『やまなし』、そして畑山博の賢治評「イーハトーヴの夢」を。

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『イーハトーヴの夢』

賢治が中学に入学した年も、自然災害のために農作物がとれず、農民たちは大変な苦しみを味わった。その次の年も、また洪水。

「なんとかして農作物の被害を少なくし、人々が安心して田畑を耕せるようにはできないものか。」

賢治は必死で考えた。

「そのために一生をささげたい。それにはまず、最新の農業技術を学ぶことだ。」

(中略)

暴れる自然に勝つためには、みんなで力を合わせなければならない。力を合わせるには、たがいにやさしい心が通い合っていなければならない。

そのやさしさを人々に育ててもらうために、賢治は、たくさんの詩や童話を書いた。

「風の又三郎」「グスコーブドリの伝記」「セロ引きのゴーシュ」、
そして「やまなし」

「イーハトーヴの夢」より

イーハトーヴとは、賢治の心の中にある理想郷である。故郷岩手をもじった言葉だと言われるが、はっきりしない。語源を明らかにしなかったのは、『やまなし』の「クラムボンは笑ったよ」と同じだ。

楽園


私は子供の頃、母に連れられキリスト教の教会へ通った。近しい方に個人研究もしていただき、思えば教会はかなり身近な存在だった。

キリスト教では1000年王国や楽園、仏教では浄土の思想がある。終末思想に関しても多く触れた。

こうでもないと、どうも賢治の楽園「イーハトーヴ」がピンとこないようだ。

都市伝説がウケるのだから、終末思想もウケるだろうと、生徒らに話してみることもある。

マタイ


マタイ24章3節から13節には、こうある。この世が終わり、楽園が訪れる。終わりの日、患難についての予言である。

24章 
3 「おっしゃってください。そのことはいつ起こるのですか。また、あなたが来られて世の終わるときには、どんなしるし があるのですか。」

4 イエスはお答えになった。「人に惑わされないように気をつけなさい。

5 わたしの名を名乗る者が大勢現れ、『わたしがメシアだ』と言って、多くの人を惑わすだろう。 

6 戦争の騒ぎや戦争のうわさを聞くだろうが、慌てないように気をつけなさい。それが起こることは決まっているが、まだ世の終わりではない。

7 民は民に、国は国に敵対して立ち上がり、方々に飢饉や地震が起こる。

8 しかし、これらはすべて産みの苦しみの始まりである。

9 そのとき、あなたがたは苦しみを受け、殺される。また、わたしの名のために、あなたがたはあらゆる民に憎まれる。 

10 そのとき、多くの人がつまずき、互いに裏切り、憎み合うようになる。 

11 偽預言者も大勢現れ、多くの人を惑わす。 

12 不法がはびこるので、多くの人の愛が冷える。 

13 しかし、最後まで耐え忍ぶ者は救われる。 

14 そして、御国みくにのこの福音はあらゆる民への証しとして、全世界に宣べ伝えられる。それから、終わりが来る。」

楽園の前には、最後の審判(ハルマゲドン)を通過せねばならないと言われる。世界同時不況や大戦が目前に迫る今、「それが起こることは決まっているが」の記述は目に留まる。

啓示の書


啓示の書のラッパを吹く七人の天使は、有名なので子供たちにも触れてほしいと思っている。

啓示の書 第 8 章

7 第一の御使みつかいが、ラッパを吹き鳴らした。すると、血のまじった音と火とがあらわれて、地上に降ってきた。そして、地の三分の一が焼け、木の三分の一が焼け、また、すべての青草も焼けてしまった。

8 第二の御使みつかいが、ラッパを吹き鳴らした。すると、火の燃えさかっている大きな山のようなものが、海に投げ込まれた。そして、海の三分の一は血となり、

9 海の中の造られた生き物の三分の一は死に、舟の三分の一がこわされてしまった。

10 第三の御使みつかいが、ラッパを吹き鳴らした。すると、たいまつのように燃えている大きな星が、空から落ちてきた。そしてそれは、川の三分の一とその水源との上に落ちた。

11 この星の名は「苦よもぎ」と言い、水の三分の一が「苦よもぎ」のように苦くなった。水が苦くなったので、そのために多くの人が死んだ。

(ちなみにチェルノブイリとは「苦よもぎ」の意であり、この記述と核との関係も疑われている)

12 第四の御使みつかいが、ラッパを吹き鳴らした。すると、太陽の三分の一と、月の三分の一と、星の三分の一とが打たれて、これらのものの三分の一は暗くなり、昼の三分の一は明るくなくなり、夜も同じようになった。

13 また、わたしが見ていると、一羽のわしが中空を飛び、大きな声でこう言うのを聞いた、「ああ、わざわいだ、わざわいだ、地に住む人々は、わざわいだ。あと三人の御使みつかいがラッパを吹き鳴らそうとしている」。

第 9 章

1 第五の御使みつかいが、ラッパを吹き鳴らした。するとわたしは、一つの星が天から地に落ちて来るのを見た。この星に、底知れぬ場所につながる穴を開く鍵が与えられた。

13 第六の御使みつかいが、ラッパを吹き鳴らした。すると、一つの声が、神のみまえにある金の祭壇の四つの角から出て、

14 ラッパを持っている第六の御使みつかいにこう呼びかけるのを、わたしは聞いた。

「大ユウフラテ川のほとりにつながれている四人の御使みつかいを、解いてやれ」

第 11 章

15 第七の御使みつかいが、ラッパを吹き鳴らした。すると、大きな声々が天に起って言った、

「この世の国は、われらの主とそのキリストとの国となった。主は世々限りなく支配なさるであろう」

マタイ24章

マタイの書には滅びの時期について、こう述べられている。

21 その時には、世の初めから現在に至るまで、かつてなく今後もないような大きな患難が起る。

そして大患難ののち、1000年続く楽園が訪れる。

イーハトーヴ


小学生たちは学校で、なぜ賢治の小説が『やまなし』というタイトルなのかを考えたそうだ。

こちらはうちの塾での課題です。

上の写真の答案を書いた生徒が、久しぶりに先生から「A」をもらったと、喜んで話してくれた。

(魚を食べてしまった)かわせみが、自然の厳しさを表していると思った。
やなせたかしは大変そうに暮らしている。
カニもかわせみに怯えて暮らしている。

生徒Aの考えより

12月はやまなしがきて、食べ物がなくても希望があるよってことが分かった。
やまなしは、カニたちを安心させてくれた。
やまなしは、そんな希望だから(タイトルがやまなしなんだ)。

生徒Aの考えより

宮沢賢治がやなせたかしさんに変わっていたが、言われてみると、やなせたかしさんは宮沢賢治のようでもある。

「イーハトーヴの夢」

「田んぼが、詩に書かれた田んぼのように、かがやいて見えましたよ。」
と、(賢治の)昔の教え子たちが言う。

苦しい農作業の中に、楽しさを見つける。
工夫することに、喜びを見つける。
そうして、未来に希望を持つ。

それが、先生としての賢治の理想だった。

「イーハトーヴの夢」より

大患難やハルマゲドンが個人的な苦難からの復活を意味しているのか、社会的な崩壊からのそれを示しているのかは分からない。

ただ、最近イーハトーヴに住む友人たちを、よく見かけるようになった。

カレー屋のイーハトーヴ、美容室のイーハトーヴ。占いの店のイーハトーヴ。私の学習塾もイーハトーヴそのものだ。

今は川根温泉のイーハトーブに来ている。週に一回の無料の日。地元のおじいさんたちが、昔の同級生たちと話に花を咲かせている。

「俺も80になったとき、こんなふうな同級生たちがいてくれたら、なにも要らないのかもしれないな」

ハーモニカで『見上げてごらん夜の星を』や『おじいさんの古時計』を吹く人がいて、あまりの幸せに「俺もこのまま天に召されるんじゃないか」と心配だった。

TVではとてつもないニュースばかり流れている。だが、生徒が言ってくれたように、12月にはやまなしが来て、世界を安心させてくれるのかもしれない。

今、『あの地平線』を吹いてくれている。

「花咲か爺さんって、話に花を咲かせる人だったのか」

見回せば、花咲か爺さんばかり。

「救世主は、うちの塾と温泉にいたのかよ」

世界が苦しいのは、救世主がいなかったからではなくて、すぐそばにいることに気がつかなかったからなのかもしれない。


お読みくださいまして、誠にありがとうございます!
めっちゃ嬉しいです😃

起業家研究所・学習塾omiiko 代表 松井勇人(まつい はやと)

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