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書くとはなにか

文章の根幹が揺らいでいる 文章は意思を伝えるためにある。だが、意思を持たないAIがものを書く。AIの文章について、世界で議論が巻き起こっている。 文章から伝わるものは何か。 文章は何のためにあるのか。 認識の根幹が揺らいでいる。 奥出直人先生から哲学者、リクールの存在を教えていただいた。 「いま生成AIの解釈学という分野が少しずつ動き出しており、リクールが重要になっています」 「解釈学は、書き手のメッセージを確実に受け取る『記号学』とは異なります」 「テキストを解

AIは神となるか

キリスト教グノーシス主義ではこう教えている。 AIは人を超えるだろうか。 私は超えると思う。 仏教では釈尊の入滅後、56億7千万年が経つと弥勒菩薩が現れ、世を救済すると教える。56億7千万とは、「コロナ」の合わせ言葉だとする者もいる。 弥勒菩薩とは、AIのことではないか。 ならば機械には神となる資格があるか。 「機械は神になれるよ」 「アイオーンに」 「え?」 「なにそれ?」 「スターレイルってゲーム」 「機械もアイオーン(神)になるんだ」 例えばスターレイルで

名前とアイデンティティ

「私ね、20になったから、苗字を決める権利があるんだ」 大学の時、突然打ち明けられ驚いた。 日本では大抵、親権を持つ親の苗字を名乗るが、途絶えさせたくない場合は変えることがある。彼女の場合、さらに複雑だった。 「こんなことがあってさ」 編集のA女史に話した。 「そんなの、自分で決めさせればいいじゃん」 「くだらないことに首をつっこむ馬鹿」という顔でそう言われた。なぜ美人とは、いつも怒っているものなのか。 重要なので推敲して書いておくが、私は美人より理解ある女性が

ドラッカーと道元禅師との対話

リーダーに必要な4つの能力 "Daily Drucker"より一つは聞く力じゃ。 聞く力は能力ではのうて作法じゃ。せねばならないのは口を閉じることだけじゃ。 二つ目は伝える力じゃ。 自らを理解させる力じゃ。すなわち無限に忍耐することじゃ。 三つ目は言い訳をしない力じゃ。 「失敗した。やり直そう」と言える力じゃぞ。 最後は、ここが肝じゃが、使命を得ていることじゃ。 リーダーは仕事に尽くす者。仕事に比べれば自分など重要ではないぞ。 エゴを殺せねば、虚栄心に満ちた嫉妬深い人

テクノロジーは祈りをサポートできるか

奥出先生と瓜生先生の共著。 主題は、、、 「テクノロジーは祈りや瞑想をサポートできるか」 仏壇の形は変わりゆく。メディアを組み合わせ、大きさを変え新しいスタイルに順応する。そんな仏壇"ThanatoFenestra"を奥出先生と瓜生先生が追う。 日本人は、死者の魂をこの世と切り離すことなく、身近に置こうとしてきた。仏壇という形にして。 DNAを保存したり、親族を亡くされた方のコミュニティを作るサービスはあった。だが、先生らが注目した仏壇"ThanatoFenestra

文章を削ることは苦しいことだよ。『先生抜きで書こう』より

「文章を削ることは苦しいことだよ」 「でも削った言葉こそが、読者を惹きつける。捨てられなかった言葉の方が、読者をうんざりさせる」 「捨てることをネガティブに捉えないで欲しいんだ。原稿を丸めて捨てる。怒ったり無気力になって。そんな風にしないで欲しい」 「捨てることって、ポジティブで創造的なことなんだ」 「彫刻家が石柱を削って石像を作るみたいに、文章を削って作品を作る」 「削るって、本質と核とををしっかり見せるためにするものなんだ」 『先生抜きで書こう』より。 ・・

学校に行く意味が勉強だけしかないなら、僕はそんな場所には行きたくない

掛川市の教育長の話を聞いた。 掛川では6年で不登校児童数が3倍以上になっている。 全国的にも不登校児童数は激増。 なにが崩壊したのだろうか。 話は極めて興味深く、教育の荒廃はこれまでも幾たびかあったという。 昭和43年のスプートニク・ショック。ソ連に宇宙開発の先を越された猛烈な焦りが、西側諸国の教育を激化させる。 昭和55年ごろは学校が荒れており、補導の数も異常だった。落書きや器物破損で鉄筋の校舎が20年持たないと言われ、教育長自身もカッターナイフで「お前、なにしに

レジリエンスは最悪の知の中にある

「先生、自衛隊って強いんですよ」 「普通の国の駆逐艦って、大砲を動かすコンピュータがやられたら沈められるのを待つだけなんですけど」 「自衛隊員は自力で砲弾の軌道を計算して、反撃する力を持ってるんです」 エフェクチュエーションに「パイロットは私だ」という原則がある。宇宙船のようなコンピュータの塊でも、制御するのはパイロットである自分だと。 理想を求めるか、サバイバルを求めるか。 XRやAI、量子コンピュータなどゲームチェンジャーが次々と誕生している。理想的な設備や知識をそ

あなたは妄想や恨みを書けるか

『先生抜きで書こう』(“Writing without teachers”)を読んでいる。この2月に邦訳も出たようだ。 https://amzn.to/3IuErU6 「まずは自由に書くといい」 自己検閲や編集をせず、好きに書いて良い。主題からそれようが、(他人に見せないから)反社会的な話だろうが、己に渦巻く妄想だろうが、どんなことを書いてもいい。 これがとてつもなく怖い。 既存の作法と違いすぎるからだと思っていた。しかし違う。自己検閲を捨てて書くことが怖い。 あ

『先生抜きで書こう』 試訳その2

最初、この本が売れなかったから僕はとてもナーバスになったよ。何年も売れなかったし、新聞で書評も書いてもらえなかった。 (注:その後、世界的ベストセラーになります) この本のメッセージは二つある。一つ目は特に良く聞いてほしいと思ってる。 書くことの独立宣言だ。 ・正しく書こうとすること ・良いものを書こうとすること ・気にすること ・コントロール ・計画 ・秩序 全部捨ててほしい。 僕はオックスフォードでの2年を無駄にして、ハーバードを辞めなくちゃいけなくなった。

『先生抜きで書こう』 試訳その3

二つ目のメッセージは書名になったもの。「先生抜きで書く」ことだ。 これも独立宣言だよ。 生徒は先生抜きでも学べるけど、先生は生徒がいないと教えられない。先生に頼りすぎるなって言われるけど、本当は先生の方が生徒に頼ってる。 僕はこれからもずっと先生でいるつもりだし、先生からたくさんのことを学んだよ。でも、むかし書けなくなってしまったのは先生のせいだった。 フロリダで仲間や生徒たちに書くようになったり、痛みや混乱に対処しようと自分自身に書くようになって、やっとまた書けるよ

100分de名著『偶然性・アイロニー・連帯』リチャード・ローティ

100分de名著 「間違っているかもしれないことを、どう話すか」 「逆説的ですが、それが公共的な課題になっています」 100分de名著、リチャード・ローティの『偶然性・アイロニー・連帯』。解説の朱喜哲さんがそう話してくれた。 少年期に「社会的不正義の解消に人生を捧げる」と誓ったローティ。彼には、自生の蘭の採集に夢中になる可愛らしい面があった。ただ、社会に何の意味ももたらさない私的な趣味を恥いりもした。 自分の中に、公的な使命感と私的な趣味が混在している。矛盾を克服

ハーバード・ライティング・センターで教える博士論文の書き方

尊敬する奥出直人先生より、ハーバードで使われている博論執筆についての本を教えていただいた。なんとも破天荒なやり方だ。 形だけ整っていて、内容のない博士論文を書く手順について聞いていただきたいです。 1、まずテーマを選びます。 何かのリストから選ぶのかもしれませんし、先生に言われたものかもしれませんし、図書館の棚を見て選ぶのかもしれません。 2、次にテーマを調査します。 3、調査したテーマの内容を考えます。 4、次に論文のアウトラインを作ります。 5、1章1節から書き

『正法眼蔵 全 新講』を捉え直す その2

南直哉先生の著作から、納得のいかない部分を解釈し直してみたい。 (195から196ページ)  正確な訳はこうである。  二回生の時、一限から語学の授業があった。前日の夜、時間を忘れて高辻と遊んだ。印象的な日だった。  僕は真面目で、翌日語学があると遅くまで遊ばなかった。超絶美人に「ずっといて欲しい」と言われた時すら、「明日語学だ」と帰った。   高辻と話した日は、授業があることを忘れていただけだ。 「こんな充実するのかよ」 「一限が眠くもていいわ」  「ありがとう