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なにを学べば生き残れるか


夏になると自殺した友を思い出す。

2022年8月


避暑地で焚き火を囲み飲み明かした翌朝、幼馴染から電話があった。

「あのさ」
「Aが死んだよ」
「自殺らしい」

「ありがとう」
「今度話そう」

二日前、Aの家の前を通りかかると車が二台止まっていた。親族が慌てていたのだ。

2014年8月


Bが言った。

「Aさ、英検2級取りたいんだってよ」
「就職のために勉強するそうだ」

「分かるけど、」
「俺、準1級持ってるけど、なんの仕事もないぜ」

私は私で不眠と鬱があり、長く引きこもっていた。

夏でも風呂に入る気力が出ず、ずっと同じシャツで寝る。ひと月かふた月に一度、黄土色になったシャツを捨てる時は、ムッとした悪臭が生ゴミより臭った。

夏が嫌いだった。何週間ものあいだ体液にまみれた黄土色のシャツ。階下の便所に行けず、何年もバケツに用をたした。自分が汚物のように見えた。

Bに誘い出してもらえなかったら、今でもあのままだろう。

2011年8月


ひきこもりになり随分経っていた。

「あれだけ学んでも意味がなかったか」

幸せだった大学時代の夢を見た。目覚めると悪夢の現実だ。どこかに夢で見ていた世界があると、散らかった部屋を引っ掻き回し無様に探した。

絶望で体が歪む。頭を抱え唸り声をあげても変わるものはない。

地獄は悪魔が住む場所ではない。なにひとつ出来ることがなく、死ぬまで他人の幸せを羨む現世だ。地獄とは。

夏になると思い出す。
Aの代わりに私が死んでいても良かった。

サークルに顔を出し、不登校の生徒をもつ母親の話を聞くことがある。

「『一緒に死のう』と子供と話しました」
「泣きじゃくりながら」

どの家庭も同じ地獄だ。

「北海道に行き高名な占い師に見てもらいました」
「宗教家にも会いましたが、変わらなくて」

不登校者が増加している。極端に増加する統計は知られているが、家族の悲劇には光が当たらない。なぜこうなったのか考える。

なにを学べば生き残れるか


ドラッカーが仕事について述べている。

仕事は、重荷であり動機であり呪いであり祝福である。

失業は精神を混乱させる。
経済を失うからでなく、自尊心を失うからだ。

人格の延長、もう一人の自分。
「私」は「私の仕事」である。

自身の価値。
仕事は貴方なのだ。

Daily Druckerより私訳

「人の役に立つ人になりたい」

生徒からよく言われる。

「塩谷は凄いよ」
「清水から袋井に出て来て、誰にも相手にされず」
「どこに営業をかけても、けんもほろろな扱いだった」
「呑みに行こうって誘ってくれたんだよ」

「袋井で初めて話せるヤツができて」
「いろいろ落ち着いたら」
「だんだん仲間が増えて、」
「取引先にも相手にしてもらえるようになったんだ」

地元有数の農家になった友人が話してくれた。

私と塩谷はゼロ歳から一緒にいる。彼と塩谷も25年の付き合いだ。

飲み屋から帰る時、塩谷に「なんで誘ったの?」「仕事だから?」と聞いてみた。

「いや、」
「べつに面白そうだったからさ」
「ハハ」

そう言って笑う。

相談したくなる人は、彼のように計画や打算がない人だ。偉いとか、なにかに詳しいことは関係がない。

本音に迫れなかったら、どんな努力も水疱に帰す

会社が力を失い、人を養ってゆけなくなった。大学を出ても職はない。米国の大卒就職率は5割にまで落ちてしまった。

横浜のマーケター、平賀敦己さんが話してくれた。

「本音に迫れなかったら、どんな努力も水泡に帰します」

起業理論エフェクチュエーションでは、市場創出と人間関係創出を同義とする。

ある起業家の言葉が忘れられない。

「現代では、自分で市場をつくることができる人が一番強い」

縁を作る術だ。唯一残された生き残るための術は。

科学、客観の知とは異なる。因果でなく、縁を起こす知。

「80年代のA社は人間的な関係があったんです」
「私も新入社員で緊張しまくっているときに電話が鳴って」
「出てみたら部長」

『お前、緊張してるだろ』
『ハハ!』

「だって」

「今はまったくそんな関係がなくなっちゃった」
「私は、会社を暖かかった80年代に戻したい」

二宮金次郎の七代目の孫、中桐万里子さんが話してくれた。

「マネージ(manage)の"manu"は、もともと『手』の意味なんです」

畑を一鍬一鍬耕すように、人間関係を耕し、皆で収穫を楽しむ。

神の手でなく人の手。

必要なものは人の手だ。

AIにすべての仕事を奪われたとき最後に残る仕事


「AIにすべての仕事を奪われたとき、最後に残る仕事が真の仕事だとすれば、」
「真の仕事はなにか」

そう問いかけた時、友人の豊田雅彦さんが答えてくれた。

「甘いな、松井さん」
「家族への仕事は永遠に残る」

脱帽である。

目が眩む技術に気を奪われ、隣人の存在を忘れていた。神と豊さんに教えてもらうまでは。

人は人に戻る必要がある。

神の如き全能でなく、我らは別の力を与えられた。

汝の隣人を愛せよ。

マタイ22章39節

人から愛を学ぶため、神は自身のひとり子を犠牲にした。旧約聖書の荒ぶる神は、新約聖書の愛の神へと変わった。

『ヨブへの答え』C.G.ユング

神が渇望する力。

縁を起こせ。

我ら本来へ帰還するのだ。

友人、橋爪淳さんの絵

橋爪さんのHPは以下です。

ご覧くださいまして、誠にありがとうございます!
めっちゃ嬉しいです😃

起業家研究所・学習塾omiiko 代表 松井勇人(まつい はやと)

下のリンクで拙著『人は幽霊を信じられるか、信じられないかで決まる』の前書きを全文公開させていただきました。

あなたの墓標には何を刻みたいですか。
「死」があなたを目覚めさせる。

そんなテーマです。是非ぜひお読みくださいませm(_ _)m


どん底からの復活を描いた書籍『逆転人生』。

彼は中学の時からの親友で、中二の時に俺が陸上部全員から無視された時「もう松井を無視するのはやめた」と、皆の前で庇ってくれた恩人である。

5名の仲間の分も、下のリンクより少しづつ公開させていただきます。
是非ご覧ください(^○^)


こちらが処女作です。

トラウマを力に変える起業論。

起業家はトラウマに陥りやすい人種です。トラウマから立ち上がるとき、自らがせねばならない仕事に目覚め、それを種に起業します。

起業論の専門用語でエピファニーと呼ばれるもの。エピファニーの起こし方を、14歳にも分かるよう詳述させて頂きました。

書籍紹介動画ですm(_ _)m

サポートありがとうございます!とっても嬉しいです(^▽^)/