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胃瘻でええやん


それは、どこにでもある、とある介護施設での風景…

🧒「は~来る日も来る日も食事介助だ~鞆さん!もうみんな年取って味もわからんやろうし、食べたらムセちゃうし、胃瘻でいいんちゃいますか?なんでご飯食べさすンスか??」

^._.^「なんか前も聞いたようなセリフやな…でも、そうやな。確かに来る日来る日も同じようにご飯食べさせて、反応もなくて、なにやってんのかなって思うよな」

🧒「そうなんすよね!胃瘻にすれば食事介助必要ないからこっちも楽だし、ムセることもないし肺炎にもならんからWinWinじゃないっすか?」

^._.^「確かにそうかもしれんな。ただよく思い出してほしい。オムツの話でも言うたが、目指すべき方向は自立支援や。出来ることと出来ないことを明らかにして、出来ないことを介助してあげるんや。自分の手で食べることが出来ないから、そこを介助するんやな」

🧒「それは確かに習いましたが…楽ちんだと思うんですよね~」

^._.^「それはこちら側の視点でしかないな。例えばあのおばあさんを見てみ?」

🧒「あの1人でパクパク食べてはる方ですか?なんでも食べはりますよね!」

^._.^「あの人は元々胃瘻やった人や」

🧒「えー!胃瘻やったのにまた口から食べられることできるんすか!?」

^._.^「全員とは言わんが、あのおばあさんの場合は入院して体力落ちて、もう医者からは口から食べることは二度とないでしょうって言われたんや。その後うちに入所して、まずはトイレから始めて、ゼリー食べてもらって口腔ケア見直して、どんどん食べれるようなったんやな。まぁ初日に職員の食べてたかっぱえびせん食べはったんやけど」

🧒「まじですか!そんなミラクルあるんですね!」

^._.^「そういう人は以外に多いやろな。なんの根拠で食べれないとしたのか。いずれにしても胃瘻が悪とは言わんが、少しでも口から食べてもらえるように工夫するのが介護やな」

🧒「なるほど…」

^._.^「さらにあの人見てみ?」

🧒「あの寝たきりでご飯の時くらいしか起きない人ですか?」

^._.^「あの人はかれこれ5年、ほぼパンとコーヒーしか食べてない。それで今100歳超えてもまだ健在や。それはもしかしたら好物で毎朝パンとコーヒー食べてたからかもな」

🧒「ひえー!そんなこともあるんですか…」

^._.^「人はいずれ老いて死ぬ。これだけは全人類共通して持つ運命やな。大切なのはそれまでどう生きるか。好きな物を好きな時に食べる。もちろん出来ないこともたくさんある。ただ、少しでもそれを叶えてあげたいよな。座って口から食べる、そういう当たり前の生活を目指す、その方向性はしっかり示していきたいよな」

🧒「…鞆さん!介護ってやっぱり深いッスね!俺、かっぱえびせん買ってくるっす!!」
バタバタバタ…

^._.^「いや、そうやなくてやな…まぁええか…」

これは、どこにでもある、とある介護施設での風景
だが、ほんの少しだけ、希望がみえる風景だ


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