最後の夏合宿③【満身創痍】
短距離チームは、一番の山場であったサイクル走を乗り切り達成感と充実感に包まれていた。
この日の夜は、館山の何人かと大富豪をしたり、部屋(俺、渉、聡汰、紘太くん)で夜中まで話したり、最高に楽しかった。
最終日のメニューは、昨年と同じく男女混合リレーだった。昨年優勝していた俺は、密かに連覇を狙っていたが優勝はできなかった。
寺田はこの合宿中も怪我と戦っていた。そのため限定的にメニューをこなしていたが、この最後のリレーは完走することができたみたいだった。
リレーが終わった瞬間、たまたま寺田が横にいたので肩を組みながらお互いを称え合った。
最後の昼食のときのこと。
もうここには来ることはないんだなと思うと少し寂しかった。
食事を終え、食器を片付けるときに「ごちそうさまでした!」と頭を下げた。たった2回だったが、この宿舎には感謝でいっぱいだ。
聡汰も食器を片付ける際に、食堂のおばちゃん達に挨拶をしていた。
「ごちそうさまでし.......ちゃ〜!」
と、芸人のたむけん風に。(笑)
最後の最後まで聡汰は面白かった。
帰りのバスは、みんな疲れているはずだが、ずっと大富豪で盛り上がった。このときの写真をなぜか寺田が持っていて、結婚式のムービーで流してくれた。
みんなめちゃくちゃ若かった(笑)
俺の記憶だと、このバスの到着場所は「泉中央」と「仙台」の2つがあった。
基本みんな泉中央で降りることになったが、宗弘は仙台で降りるため、ここで別れた。
バスから降りてしばらく経ったときのこと。
聡汰が自分のiPodがないと言い出した。携帯の充電も切れているとのことだったので、俺が宗弘にメールを送った。
「聡汰のiPodバスにない?」
聡汰や聖多は、このままサイゼに行ったみたいだったが、俺は足がパンパンで接骨院に行きたかったので帰ることにした。
聡汰達と別れてしばらくすると、宗弘から返信があった。
「聡汰のiPodバスにあったけど、かなりひどいぜ?床に落ちてて何故かベトベトしてる」
このメールを聡汰と一緒にいるであろう聖多に送ると、すぐさま聡汰の変顔の写メが送られてきた(笑)
聡汰と宗弘のやり取りを、俺と聖多がなぜか中継していて楽しかった。
俺は家に着き、すぐに接骨院に行きたかったがあまりに疲れていたため少しだけ横になった。
気付くと1時間くらい寝ていて、慌てて接骨院へと向かった。
接骨院に着くと、先生から「足どうしたの?」と驚かれるくらい疲労でパンパンに張っていた。
精神的にも肉体的にもギリギリのところで走っていたのだと思う。
この合宿では、自分が昨年掲げていた小さな目標を達成することができた。
また、「對馬のために」という想いが男子同士の絆を深めることなった。
さらに男子と女子の中にあった壁を打ち破ることができチームが一つになっていくのを実感できた。
不安要素が多かったこの合宿だが、多くの収穫があったように思える。
気付けば、部長になって3週間が経っていた。
この合宿が終わり、ほんの少しだけ肩の荷が下りたような気がした。
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