見出し画像

可愛い姑

世の中には酷い姑が居るようだが、幸いウチの姑は全く当てはまらない。私は幸せ者だとつくづく思う。しかし、私は別の意味で居心地が悪い。まるで「お客様」扱いなのである。

水仕事をしようとすると、「そんな事したら服が濡れる」と飛んできて交替する。というか、エプロンやスポンジ等を奪われる。掃除機をかけようとすると「そんな重いもん持ったら疲れるよ」と奪い取る。風呂掃除しようとバスタブに入って擦っていると私を追い出して代わりにバスタブに入ろうと躍起になる。最早漫画である。でも正真正銘本当の話である。

で、やることをことごとく奪われて所在なさげに座っていると、前に次々と色んな物が並べられる。みかんに始まり、まんじゅう、せんべい、餅、チョコレート、ビスケット…孫じゃないんですけど…。美味しいよ、と勧められるが、くるくると働く姑を前にしては菓子など、喉を通らない。

最初は私に家事の聖域を汚されるのが嫌なのかな?と思っていたが、そうではないようだ。「ウチに嫁に来て頂いた」という感覚のようである。畏れ多いことだ。因みに夫の義兄にも同じような扱いらしく、義兄は「床の間に飾られてる感じ」とボヤいていたらしい。

しかし最近は寄る年波には勝てず、少し頼んでくれるようになった。やっと本来の嫁らしい事が出来て嬉しい反面、姑の年齢を感じ、少し寂しい気持ちにもなる。

だが、気持ちはいつまでも「来て頂いた嫁」のようで、手伝いをした後には高級な菓子折や明太子、鰹のタタキなどがドーンと送られてくる。最近、ネット通販を使いこなすようになり、油断出来ない。「これは一体いつの何のお礼だろう?」と考え考えお礼の電話をすると、本人にはちゃんと理由があって贈ってくれている。なので、びっくりしつつ有り難く頂いておくしかない。後から感想を求められるので答えておくと、私や夫の意見を参考に、他の人への贈り物にしているようだ。モニターとしての役割くらい、しっかり果たさねばなるまい。

今年年女の姑。もうちょっと仕事任せて下さいね。手持ち無沙汰で幸せな嫁より。