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馴染みの顔

以前の職場に、いつもやってくる小鳥がいた。白黒のまだら模様の羽根に黒く細い脚。あまり鳴かないが、時折甲高く「ピッ」と鳴く。人をあまり怖がらず、結構間近までやってくる。飛んでいる姿より「歩いている」姿をよく見た。

私はよくゴミ捨てに行っていたのだが、その際は5回に1回くらいの割合でどこからともなく舞い降りてきて、ちょこちょこついてきた。私の部門は紙ゴミが主体で、彼(彼女?)の喜ぶようなものはなかったのだが、私がゴミ置場の扉を開けるのがお目当と思われた。開けた瞬間ほんの少しだが、風圧でパン粉などの小さく軽い食品ゴミが飛ぶ。彼はそれをあてにしているようだった。帰りにはついて来なかったのはそう言う理由だろう。

名前こそつけないが、誰にでも懐っこいので、なんとなくみんなで可愛がっていた。彼は何故か片脚の先が欠損していた。何かに襲われて逃げた際に千切れたのか、生まれつきなのか、全くわからない。が、器用にちょこちょこ歩いており、不自由している様子はなかった。

あんまりよく見かけるので、名前を調べてみると、「ハクセキレイ」と言う鳥のようだとわかった。まだら模様は川原で生活していた名残りなのだろうか。元々渡り鳥だったものが、住み着いたようである。オスメスは白黒の色合いで見分けるようだ。

関東に来たら、また遭遇した。コンビニの前や、ファーストフード店のゴミ置場周辺でよく見かける。やはり人を怖がる様子はあまりない。平気で近くまで来て、ちょこちょこ歩いてエサを漁っている。本州全土にいるのだろうか。

コミカルな動きっぷりで、見かけるとつい頰が緩んでしまう。この小さな愛嬌者は、私を笑顔にしてくれる「馴染みの顔」である。