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祖母のおはぎ

父方の祖母は戦争未亡人で、ずっと子育てと仕事に忙しかったせいだろうか、料理を作ると言う事にあまり頓着はなく、帰省しても近所の料理屋からハンバーグやエビフライと言った、子供の好きそうなメニューを取り寄せてくれるのが常であった。子供心にとても嬉しかったが、何でも手作りをモットーにしていたウチの母には少々苦々しいもてなしであったようだ。

そんな祖母が必ず手作りしていたのが梅酒とおはぎであった。砂糖も梅もケチらずふんだんに使うので、梅酒もまったりと濃厚で祖母の梅酒は濃くて美味しかった。ほんのちょっとね、と言われたものの美味しくてついつい飲みすぎてしまい、酔っ払ってグウグウ寝てしまったのは小学校四年生の夏休みだったと記憶している。

ウチの母は潰したご飯と言う物に拒絶反応を示す人で、おはぎを作ってくれた事は皆無である。が、祖母はいつも沢山作って待っていてくれた。あんこもたっぷりで凄く甘い。あんこも勿論手製で、あまり小豆を潰さず、『超つぶあん』である。きなこのおはぎは中にあんこが入っていた。ウチでは見ない物珍しさもあって、とても美味しく楽しみだった。
祖母は手が大きい人で、おはぎもそのせいかとても大きかった。小柄な私は2個も食べればお腹いっぱいで、他の物は入らなくなってしまうが、食べきれないくらい沢山作ってあった。祖母の歓迎の気持ちだったのだろう、と今にして思う。

スーパーの惣菜コーナーでおはぎを見ると、当時の祖母の作ってくれたおはぎを懐かしく思い出す。
本当は時間の余裕があれば、料理する事が好きなお母さんだったのかも知れない。美味しいものが好きで、材料をケチらなかった祖母の、数少ない手製のメニューの思い出である。