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私のキュンキュンポイント

男性が心奪われる女性の仕草とか表情というのは、色々あるだろう。
髪をかき上げるのが好き、とか、目を伏せた時の睫毛がたまらないとか、コップに添える小指がピンと立っているのが良いとか、枚挙に暇がない。
では逆に、女性は男性のどういう仕草や表情にキュンとするか。若い女性向けの雑誌などで特集になったりしそうだ。
オバサンも昔は『若い女性』だった訳なので、生きている限りキュンキュンポイントは絶対ある(はず)。『○○する仕草って良いよね~』などと群れてキャッキャと騒ぐことからは縁遠くなってしまっているが、中味はきっと変わっていない。
私も一応昔は『若い女性』だったので、やはりキュンキュンポイントはある。この歳になっても、未だにときめいてしまう。

自分が車の助手席に、相手が運転席に座っている状態で、車をバックさせる必要性が生じた時、運転者はどうするか。
大体は後ろをキチンと見る為、身を起こして助手席のシートの背もたれの裏側に手を当てると思う。
これこれ。これが私の『キュンキュンポイントその一』である。
相手の顔が四分の一くらい、こっちを見ている。自分は座ったまま、それを見上げている。
いつもは見えない顎のラインや、首の伸びた様子、男性らしい筋肉の付いた肩などが、特殊なアングルで目に飛び込んでくる。わあーこの人が私の彼なんだあ、と思うと物凄くワクワクする。
そしてこの態勢。自分の背中に直接手は触れていないけど、身体ごと抱えられている気分になる。これにドキドキしないで、何にドキドキすると言うのか!

これで相手の運転が下手なら折角のときめきも一気に冷めるが、幸か不幸か、私のいままでお付き合いしてきた方々(といっても片手で十分足りる数)は皆、とても運転の上手な人ばかりだった。
自分にない技術を持っている人には益々惹かれる。『男は単純な生き物だ』とよく言うが、女も単純な所はあると思う。
単純度高めの私のような女を陥落させるには、せいぜいドライブデートして、狭い道でなす術もなく立ち往生する対向車にため息をつきながら、助手席の背もたれに手を当てて、軽く猛バックすると良い。
一発でイチコロである。

因みに夫とはドライブデートが殆どだった。電車で出かけるのが面倒だったから、というのが理由らしかった。
昔から夫の運転は上手いし、マナーが良いと思う。雑な運転をするのを見たことがない。
自分の運転技術を見せつけることで、私をどうにかしてやろうとは思っていなかっただろうけど、結果的に私は夫の不作為の術中に落ちたのである。
これがドライブでなく電車デートが多かったなら、結果は違っていたかも知れないとすら思う。

私のキュンキュンポイントはもう一つある。
目の下には『涙袋』という、少し膨らんだ部分がある。この『涙袋』も人によってはとても良く似合い、色っぽい感じがするものだと思うが、私のキュンキュンポイントはここではない。
笑うとこの涙袋の下、目尻の方に少し行ったところ付近に、少し皺の寄る人がある。年齢は関係ない。若くても寄る人は寄る。
これ。『キュンキュンポイントその二』である。これがたまらなく好きなのだ。

実は夫、絶妙な具合にこの皺が寄る人だった。
今や数多の皺に埋もれて分からなくなっているけれど、出会って最初に夫の表情にどきんとしたのは、これの所為だったと思っている。
悔しいから本人には伝えていない。

この皺は女性だと老けて見えるだけなのに、男性だと柔らかい、優しい印象になるから不思議だ。少しくらいキツイことを言っている人でも、この皺を発見すれば私の中の評価はグッと上がってしまう。
この皺が寄るかどうかは、私にとって男性の顔そのものよりも重要なくらいである。
但し、あまり深くはダメだ。ただの加齢による皺と区別がつかない。ほんのニ、三本、よく見ないと分からないくらい短いのが寄るのが良い。
いっぱい寄ると、見た目が良い男性でも、年齢を感じて残念になってしまう。ほんの少しだけ、である。

要はカッコよく運転の出来る人で、さりげなく大事にしてくれて、ベタベタはしないけれど、ふとした瞬間に優しい、シャイな笑顔をチラリと見せてくれる・・・というのが私のときめく男性像である。
振り返ると、夫は『さりげなく大事にしてくれる』を除いては及第点だったと思う。
偶然の出会いだったけれど、私はちゃんと『キュンとする』人を選んでいたようだ。

そういえばこういうときめき、随分ご無沙汰だ。ちょっと悲しい。
たまには夫をドライブデートに誘ってみようか。






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