ゆめ、うつつ?







「あれ?
何か貴方死にそうな顔してますね、大丈夫ですか?」



「何か何が辛いのか分からないのに死にたい…
どうしたら治るのこれ、惨めでやってられない」

「ストーーップ!!
なんか貴方死にそうですけど大丈夫ですか!?」

「……ん?」

「なんかもう顔が青白くて目に生気ないですけど!
フラフラしてるし…あ、二日酔いですか!?」

「……なんだなんだ」

「ちょっとね、僕死にそうな人見たらほっとけないんですよ!なんかありました!?」

「いや、そういうのいいんで……」

「あー待って待って!待ってください!
分かりますめちゃくちゃ怪しいですよね」

「いや、うん……」

「僕 特に死神〜!とか、天使〜!とかじゃなくて
ただの人間なんですけど!」

「……でしょうね。」

「僕とどっか行きませんか!?」

「行きません。」

「ですよね〜!!」

「……」

「あー待って!うーんそうだなぁ、あ!
そこにコンビニあるんで行きません!?
僕、お酒奢りますよ!」

「……はぁ、」



「いや〜!やっぱビールはいつ飲んでも最高ですね!」

「……」

「でもね、特に昼間のビールが美味しいと思ってて
で、これってビールに限らずお酒全般だと思ってて!
なんだろ、この昼に飲んでるって言う背徳感
たまらなくないですか!?」

「……ふふっ」

「あ!今笑いましたね!?
僕、貴方のその笑顔が見たかったんですよ!」

「変な子……あなた何歳?」

「いや〜やっぱ人の笑顔は格別ですね!
もっとビールが美味しくなっちゃったなぁ!」

「ん?」

「何があったんですか?」

「……特になにかなんて、ないよ
ただ生きてるだけだけど
それを辞めたくなる時があるんだよ。
それでも朝起きて仕事に行って
ちゃんと仕事を終えて足は家へ向かって
それの繰り返し……生きてる価値、何なんだろう」

「難しいっすね!
でもね生きてることって、僕めちゃくちゃ素晴らしいことだと思ってて!」

「お花畑……」

「そりゃもちろん僕には測りきれないです!
どうにも出来ないです!でも、このビール飲んでる
時間、他のこと考えました?」

「え?」

「ビールうめぇなぁ……なんだこれ……
って思いませんでした?」

「……まぁ、思ったかも……」

「ですよね、ビールって美味いんすよ。
そういえば何かやりたいこととかないんですか?」

「やりたいこと?」

「ほら、子供の頃の夢!
僕 人の夢の話聞くのめちゃくちゃ好きなんですよ!
なんか無いですか!?」

「……警察官、に なりたかったかな……」

「きぇ〜!!!公務員!?
なんてカッコイイんだ……きっかけは!?」

「……しょうもないよ
ただドラマのカッコイイ警察官に憧れて
こんな風に街の人たちを……
守られるべき存在を守りたいと思った……」

「しょうもなくないじゃないっすか……
僕めちゃくちゃ感動しちゃった……
なんで諦めちゃったんですか?」

「向いてないって言われたからかな……
体力もないし、忍耐力もないって
そんな奴が警察官なんて無理だって……」

「それ自分自身に言われたんですか?」

「……ん?」

「いや、それ、自分自身に言われたのかなって」

「第三者に決まってるでしょ」

「なんで自分のこと何も知らない第三者に言われたこと
そのまま飲み込んじゃったんですか?
向いてる向いてないなんて、自分自身でしか
分からないじゃないですか」

「……確かに」

「そんなことを思い込ませてくる人間の言うこと
信じなくていいですよ
自分の可能性なんて自分にも分からないのに
第三者に理解なんて出来るわけないじゃないですか」

「そうだね……」

「よし!じゃあ会社に電話しましょ!」

「は?」

「辞めますって言うんですよ!」

「何それそんなこと出来るわけないじゃん」

「何でですか?それも自分に言われたんですか?」

「……」

「簡単ですよ!
一歩踏み出すのが、めちゃくちゃ難しいだけなんですよ!今、僕がここにいるうちに行動してみませんか?
警察官の募集を探して応募して、会社やめて
警察官になるための準備しましょうよ!」

「今から警察官なんて……」

「遅いと思ってます!?もしかして!?」

「遅いでしょうよ」

「40歳から大学行き始めたり、60歳から高校行き始める人だっているんですよ!」

「うるさいな!前向きなことばっか言って……
上手くいかなかったら責任取れんの!?
死にたいと思いながらも最低限生きてける生活が出来てるんだよ!しんどいけど、今までそうやって生きてきたんだよ!今更……今更変えられる訳ない!」

「責任なんて取れませんよ
自分でしたことの責任を取れるのは自分だけ
でもそんな死にそうな顔して楽しくもない人生生きて
死ぬまでやり過ごそうとしてるのを
僕は見過ごしたくないだけなんです」

「なっ……」

「今更変えられるわけない
どうしてそう思うんですか?
試してもないのに、なんで分かるんですか?
そりゃ上手くいくかも分からないし
上手くいかなかった後のことなんて分かりません。
でも、今行動するかしないかで 人生絶対に
変わると思いません?」

「……」

「ま、無理強いはしませんけどね。
あ、ビールおかわりいりますか!?」

「……いらない。
その代わり、電話する間……ここにいて。」

「任せてくださいよ!」

「……もしもし、部長
今日付けでやめます。お世話になりました。
大してお世話にもなってないけど。
貴方から何も教わったことは無いけど。
……はい?
今までお前にどれだけの事をしてきたかって……?
黙れクソジジイ!
一生そうやって威張り風とハゲて抜けそうな髪の毛
吹き散らかしとけ!!!」

「アーッハッハッハ!!最高じゃないっすか!!
いや〜めちゃくちゃおもしろいです。
これでビール代チャラレベルで笑いました」

「あぁ……何かスッキリした。
このくらいの気持ちがあれば
警察官にだってきっとなれるよね……」

「まぁそれは分かりませんけど!」

「ハッキリした奴だな……」

「でも!めちゃくちゃ応援しますよ!
自分を信じて突き進むんです!」

「はぁ〜、辞めちゃった。
……もうちょっと飲みたいな
次はこっちが奢るから、付き合ってくれる?」

「もちろんです!!」



「じゃあ気をつけて!
いつかどっかで会ったら敬礼するんで
してくださいね!」

「気が早いことで……」

「なんか約束あった方が頑張れるでしょ!
それをバネに!まずは警察学校でビシバシ鍛えられてきてください!」

「……そうだね、ビールごちそうさま。」

「お達者で〜!!」


「僕のことは、死にたいと思ってる人にしか
目視出来ないんです。
それってどういうことかって……?
そんなの内緒ですよ!
強いて言うなら、僕は夢を叶えることが出来なかった
自分の意思を押し殺した結果……
あ、待って!そこのあなた!
僕とどっか行きませんか!?
……そうだなぁ、ドライブとか!」

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