小説 「火と水」

❶❺

僕は、悩んでいた。

それはもちろんリコの事だ。
このままにしておくのは、違う。
ただ、受験を控えている彼女に、これを切り出して心を壊したくない。

別れようはいつか言わなければいけないのは、わかっていた。ただ、いつが1番良いタイミングなのかが、自分でも、分からないでいた。

僕は今までの事を田中に全て話した。

「おもしろそう」
「おもしろいよ、でも何というか誰にも言えなくて。」
「あいつには言ったのか」
「言える訳ないだろ」
「まぁそうだよな。」
「それを、悩んでるんだ」
「そんで、お前はどうするの。いつまでも、このままにしてるつもりなのか。」
「僕にも、分からない。」
「あいつ、どんな顔するんだろうな。
でも、あいつが、どんな気持ちになるか、俺には分かる。」
「勝手なこと言うな。」

田中は、受験の前日に言えばと冗談をぬかしていたが、ぼくはそんなクズ人間ではない。


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