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小説 「桜華」

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2019年 3月12日 17時5分

ピンク色の道が消えては無くなりを繰り返していた。風が、冷えた思い出とピンクの花びらを連れていた。

「大学では何勉強するの?」

静かな教室にただ2人だけの時間が流れ、時計の秒針の動く音が2人の鼓動と連動した。

「特に理由とかないけど経済学。なんか響カッコいいじゃん。でもオレはまたサッカーで朝から晩まで忙しいし勉強といっても講義では寝るだけなんだろうな。」
「確かに、リョウちゃんはいつも寝てる」

サオリから笑みが溢れた。笑った時に右ほほにエクボができた。

「寝るっていってもあれだぞ、体力の温存だから別に寝たいから寝てるわけじゃねぇからな。」

少しムキになって唇を噛んだ。口内炎のせいか少し鉄の味がした。

「あのさ、プロサッカー選手になってね。そしたら、見に行ってあげるから。」
「おう」

唐突な質問に戸惑いを隠せずに気の利いた言葉がでなかった。

「絶対なってね。じゃないと、、、」

悲壮感と呼ぶべきか、暗いそこに沈みかけている何かを見つめながら、どうする事も出来ないでただじっと噛み締めているような目をしていた。

「じゃあね。」

そう言って、サオリはストラップが山のように付いたいかにも女子高生のバックというバッグを肩にかけた。

「おい、ちょっと待てよ。」

サオリは目を赤くしていた。

「さっき、パンツ見えてたぞ。」
「バーカ。」

サオリが手で目の雫を払いながら口元を緩ませた。

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