小説 「火と水」

❶❸

今日は、文化祭当日。 僕らの高校で、にぎわいをみせる一つのビッグイベントだ。

僕たちのクラスは、フランクフルトを売る事になってた。
前日、リコから文化祭一緒に回ろうと言っってきた。もちろん、僕はそれを、承諾していた。

テントの下で僕は、フランクフルトを鉄板の上に並べて焼き始めていた。

「やっほ〜」

前から、半袖を腕まくりして、腕を組んだ女子2人組が、こちらに手を振りながら笑っている。

リコと、マミちゃんだ。

ものすごく晴れていたのだが、僕の胸には分厚い積乱雲がたちこもって上手く呼吸ができなかった。なんだか、それをみて楽しんでいる自分もいた。その事が、怖くもあった。

その光景を目の当たりにした時、今自分の置かれている状況を、頭の中で図にしてみた。自分でも、笑えた。

こんなの、テレビドラマでも、ベタで作れない。こんな、脚本を持っていったら即ボツにされてお終いだ。それぐらい、人間関係が複雑に絡み合って、自分でも、正確に認識出来ていなかった。ただ一つだけ、確実なことは、

マミちゃんの事が好き。

ということだけだ。

その2人は、僕に近づき、

「ほら、2人で写真とりなよ、私、撮ってあげる。」

マミちゃんは、リコの事を肩でグイグイと押し、僕の横に立つように促した。
僕らは、初めて2人で写真を撮った正門の前で写真を撮ることになった。
何とも、マミちゃんはタチが悪い。もちろん、僕も同じであった。

「はい、チーズ」

撮った写真に映った僕の顔は、何だか今まで見た自分の顔史上最も、「変な顔」だった。説明しようのない、「変な顔」である。


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