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インターフォンに起こされた朝

「ピンポーン、ピンポーン」

まだ夢見心地の私は、ベッドのなかにいる。この音が、夢の延長線上なのか、現実なのか区別もついていない。

「ピンポーン、ピンポーン」

やっぱり、現実らしい。しかし、何か配送を頼んだ記憶はない。ベッドから起き上がって、インターフォンを見る。なんと、玄関のインターフォンが鳴っているではないか。朝から、ゾッと恐ろしくなった。

私の家は、エントランスと玄関の2つにロックがかかっている。通常のパスなら、エントランスの通知が最初にきて、その次に玄関の通知がくる。エントランスの通知の際には、誰がきたのかカメラ越しにわかるが、玄関の時はそうではない。覗き穴から見るのだ。この方式は、とても安心感があって気に入っている。3ウェイ・ハンドシェイクとコミュニケーション方法が似ている。突然、訪問されるよりもよっぽど受け取り手も心の準備ができる。

しかし、たまにエントランスを経由せずに、玄関のインターフォンを押してくる人もいる。集合住宅の場合は、誰かがエントランスの入場を許可すると、その先は自由な無法地帯になってしまうことがある。もちろん、各家庭の扉を突破するには、各家庭から入場の許可をもらう必要があるのだが、とはいえ、全く知らない人がマンション内を行ったり来たりできるというのは好ましくない。

よりセキュアなマンション構造を考えるとしたら、エントランスで許可した家庭のみにアクセスできるパスを逐次用意するということだろうか。もしくは、インバウンドとアウトバウンドのトラフィックを明確に分けるでもいいと思う。例えば、エレベーターは認可された階にしかいけないとかでもいいし、住民用の入り口と来客用の入り口を分けて、来客用の入り口は一括管理されているなどだろうか。やっているところもありそうである。

要するに、勝手に入ってくるなということなんだが、勝手に入ってくる人をどうやって排除するかの観点だと、結局いたちごっこ。真に解決するには、勝手に入る動機を無くすのが一番いいのだ。しかし、これは難しいよなぁ。住居というのはある程度プライベート空間であるから、秘密性があって、その秘密性に価値を見出す人が住む人にも侵入する人にもいるわけで、仮に秘密性を無くしてしまうと、プライベート空間ではなくなってしまって、住居としての意味がなくなってしまう。

信頼できる人に許可(要するに鍵)を与えて、権利を付与する方法は確かにいいのだけど、誰も信頼できないことを前提としたゼロトラストの観点で考えると、権利所有者が何もしないという前提がそもそも怪しい。

そもそも、なんで秘密が必要なのか。あんまりちゃんと考えたことはなかった。自分が秘密にしたいと思っているものは、本当に秘密であるべきなのか。秘密にしておくことで何が嬉しいのか。わからなくなった。

仮にガラス張りの部屋に住んでいたとして、何を失うものがあるのだろう。

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