自分の感性の解釈が、自分の表現を創り出す

『Autumn Leaves』 

私の思い出の曲。元々はフランスのシャンソンの曲らしいが、今ではジャズの定番曲として有名な曲である。私はこの曲と、高校生の時に出会い、そして絶望した。

当時、私は休日にギターを習っていた。知り合いがやっているライブハウス、そこではいつもブルースが流れていて、マスターがギターを調整したり、曲を作ったり、犬とじゃれたりしてる不思議な空間。

今日は何がやりたい?

いつもマスターは私にこう問いかけてきた。彼は大体なんでも弾けたから、私が突拍子もないリクエストをしても、「じゃ、曲聞かせて。コード起こすから」っていって、チロチロ弦を鳴らしては紙にコードを書いてを繰り返す。あっという間に、曲がコピーされて出来上がる。私はそれを見ているのが好きだった。

ある日、特段やりたい曲のリクエストがなかった私にマスターは、スケール(音階)を教えてくれた。確か最初はペンタトニックスケールだったと思う。一連のスケールの配置を教えたのち、彼は言った。

これから僕がコードを弾くから、
今教えたスケールを自由に思うように弾いてみて。感じたままでいいよ。

「感じたまま...?」

と私は少し思ったが、マスターは勝手に始める。Aから始まるコードをただひたすらに弾いて私の入りを待つ。

「どうしよう。。。」

と思った。でも待たせるわけにはいかないから、なんとか弾き始める。ぎこちない音、調和の取れていないセッション。大変、不快な音が鳴り響く。徐々に自信がなくなっていく私。ギターを奏でる指も、戸惑いの色が音に乗っていた。

もっと好きなように弾いていいよ。あと、僕の音もちゃんと聞いてね。

彼は優しく私にいう。でも、何度やってもうまくできなかった。感じるよりも先に、頭で考えてしまっていた。とても悔しかったことを思い出す。大事なことは感じることなんだ、とわかっていてもできない。そんなもどかしさを私はどこにやることもできなかった。

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今も私は、感じたことを感じたままに表出することは得意ではない。だが、感じたことを自分の言葉で表現できるようになったと思う。感じたままを表現できる天才には叶わないかもしれないが、私は自分の感情を自分の言葉で自覚することができるようになったと思う。

好きなように、感じたままに何かを表現するのは難しい。でもそれはとっても重要なことだとも感じる。感じたことを表現するのが苦手なら、感じたことを翻訳して伝える能力を鍛えるでもいいんじゃないか。

翻訳した結果を自分で解釈し直して、自分なりに表現を作り上げていくことも自分なりの表現であると私は呼びたい。

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セッションの中で、とりわけたくさん練習したのが Autumn Leaves だった。ビル・エヴァンスの定番のやつが私は一番好きなのだが、もし聴いたことがない人は聴いてみてほしい。飾りすぎず、でも地味でもなく、大人の茶目っ気があるそんな音がする気がしている



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