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謝らなくていい時は、謝らなくていいんだよって伝えてあげたかった 〜渋谷センター街のウェンディーズ〜

陶芸教室からの帰り道、渋谷のセンター街で。

毎回12時すぎに教室が終わり、少しお腹が空いている私はいつもお昼を渋谷のどこかで食べる。ときには、蕎麦屋だったり、ときにはラーメンだったり。お店を調べるほど食には関心がないため、行き当たりばったりでお店に入っては適当に何かを食べて立ち去ることが多い。チェーン店は店頭でどういうものが食べられるのかわかりやすくて、つい行ってしまう。

センター街のウェンディーズ。ハンバーガーが食べたいときによく行く。マクドナルドでもモスバーガーでも、バーガーキングでも、フレッシュネスバーガーでもなく、ウェンディーズなのだ。ハンバーガーが純粋に美味しいし、セルフレジが導入されているし、他のチェーン店にくらべて店内の雰囲気が落ち着いているのが好きだ。

今日も変わらず、ハンバーガーとポテト、そしてコーヒーを注文してしばらく待つ。1つ2つと私の注文したものがレジ前に運ばれてくる。残りはコーヒーだけ。そのときだった。

あっ

レジの店員さんがコーヒーをトレイにこぼしてしまったのだ。コーヒーの液体がレジの上に広がって、パッとコーヒーの匂いが広がる。咄嗟に店員さん、

申し訳ありません!

と、私に謝る。そして、席までお持ちするから番号札をもっていてくれと言われる。私は指示にしたがって、席を探して、しばらく待つ。数分後、店員さんが2名私のところにきて、

申し訳ありませんでした、大変お待たせいたしました。

と言われる。「いいえ、大丈夫ですよ」と言って私はハンバーガーを食べ始めた。やっぱり、ウェンディーズが好きだなと思ういつもの味で、とても美味しい。チェーン店の中で確実に一番であると感じる。満足した。

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でも、ふと思うと私はなぜこんなにたくさん謝られたんだろうか。店員さんは確かにコーヒーをこぼした。しかし、私には何も被害がなかったし、実際に追加で待ったのも数分くらいである。謝られるよりも

失礼いたしました。代わりの物を用意いたしますので、しばらくお待ちいただけますでしょうか?

と聞かれて、承諾した上で、

お待ちいただきありがとうございました。ご注文いただいた商品でございます。

と対応いただく方がずっと気持ちがいいのになあ。謝るよりも、感謝を伝える方がずっとポジティブな印象を受ける。勝手に謝られると、なんか謝らせているみたいで好きじゃない。

誰しも失敗はある。謝るべきは、その失敗が誰かに被害を出したときだけ。私の顔が怖かったのかもしれないが、店員さんに余計な謝罪をさせてしまったなぁと考えてしまった。もっとはっきり言ってあげた方がよかった。

謝ることじゃないから大丈夫だよ。数分待てばいいだけでしょ。

と。

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この作品は、共創プロジェクト『不協和音』の作品です。このプロジェクトでは、エッセイを通してお互いの価値観や発見を共有し、認め合う活動をしています。プロジェクトについて興味を持ってくださった方は、以下の記事も合わせてご覧ください


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