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【連載】西洋美術雑感

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西洋美術から作品を取り上げてエッセイ評論を書いています。13世紀の前期ルネサンスのジョットーから始まって、印象派、そして現代美術まで、気ままに選んでお届けします。
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#農民画

西洋美術雑感 30:ミレー「晩鐘」

印象派の絵画へ移る前に、バルビゾン派の絵画を紹介しておこう。中でもこのミレーは日本でもなじみが深く、ほとんどの人が知っているであろう。バルビゾンはパリから少し下ったところにある小さな田舎町だが、ここにかつて幾人かの画家が集まり、その広大で静謐な土地の風景画を多く描いたのである。そこでは主題は風景の方で、かつての西洋絵画のような宗教でも神話でも歴史でもない。 ここにあげた絵はミレーで特に有名な作品のひとつの「晩鐘」である。絵の中の農民二人の姿を見て、これは人間が主題ではない

西洋美術雑感 28:ピーテル・ブリューゲル「雪中の狩人」

北方ルネサンスの画家の紹介ではけっこうグロテスクなものを多く出してしまったが、この、農民画を多く残したブリューゲルを紹介しないと片手落ちだろう。 ボッシュの影響を受けたらしいと伝えられるブリューゲルは、ボッシュの絵の中の怪物や奇妙な振る舞いの人間たちに代えて、農民をはじめとする庶民を同じような感じでたくさん登場させ、画面を埋め尽くした。その画風はたしかにボッシュの絵に似通っている。 ブリューゲルがなぜここまで農民の生活を事細かに描いたかは分からない。いま現代のわれわれ