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【連載】西洋美術雑感

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西洋美術から作品を取り上げてエッセイ評論を書いています。13世紀の前期ルネサンスのジョットーから始まって、印象派、そして現代美術まで、気ままに選んでお届けします。
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#ルネサンス

西洋美術雑感 26:カルロ・クリヴェッリ「受胎告知」

カルロ・クリヴェッリはルネサンス盛期の始まり、あるいはルネサンス初期の終わりに位置する画家で、この人の絵も独特である。その後のラファエロで完成するイタリアルネサンスへ通じていると言えないことは無いのだが、自分としては、そこからだいぶ外れているように感じられる。 本来なら、クリヴェッリの描く、非常に冷たく、気高い感じの独特な女性の顔が登場する数々の絵を出したいところだが、ここではこの絵を選んだ。 この絵を見ていちばん最初に感じるのが、この厳密に製図のように描かれた透視図

西洋美術雑感 24:ミケランジェロ「ピエタ」

バチカンのサン・ピエトロ寺院にあるミケランジェロの彫刻「ピエタ」である。これは恐らく西洋美術における彫刻の頂点として永遠に残る作品であろう。 これまで、自分は最盛期ルネサンスが苦手だとずっと言ってきたが、それは、その理知的で開放的、完全にコントロールされた表現の調和、したがって健康的で明るい、という性質が自分の好みに合わないからであった。試しにその反対の要素を並べてみると分かるかもしれない。感覚的で、時に内向的、なにかに異様に執着して誇張されたいびつな表現の不調和、したが