9月第4週『LAMB』(ネタバレあり)
その日は友人とジンギスカンを食べに行く予定だった。
店で待ち合わせる前に、時間的にちょうどいい映画を見ようと探して、あった。
それが『LAMB』だった。
あとは、もともと観たかった以外に他意はなかった。
冗談みたいな偶然の話。
公開2日目、宣伝の上手さもあり、都内某シネコンはかなり混んでいた。
そして、鑑賞後のざわつき……。
賛否両論な肌触り。
個人的には割と好きだったが、ズルいな、とも思った。
以下、ネタバレ。
かなりシンプルな話だけど、とにかく説明しない。
あえて多くを語らない映画。
それが勝因だし、ズルさでもある。
まず、予告でネタバレしてるけどアダちゃんが何者かを30分くらい引っ張る。
これは宣伝で隠すと確実に稼げないだろうけど、
知らずに見れた人がいたら羨ましすぎる。
とはいえ、主な登場人物も、羊飼いの夫婦とその夫の弟と、アダちゃん。
シチュエーションもほぼ牧場のみ。
広いけど。
その中で、アダちゃんを普通に我が子として育てる夫婦の異様さは映像ならでは。
客観的なイカれっぷりと濃密な愛情は見応えありましたね。
とはいえ、あのラスト。
これぞまさに出オチ。
だけど、主人公には何が起こったかわからないまま終わることで、
それが何かはっきり提示されないことで、
ギリギリで面白さを作り出したな、と感じた。
あれ以上ハッキリと寓意を表現したり、人間を描いただけでも陳腐になるし、
観客を突き放して考えさせることで、その考える娯楽としての面白さがこの映画の味なんだと思う。
それは大きな余白に各々が絵を描く楽しみを手渡すことは悪いことではない。
けれど、その物語としての余白の大きさは、ストーリーの杜撰さも内包しているように感じてしまったのだ。
もちろん考え抜いた末の物語だったとしても。
そこにズルさを感じてしまったのだ。
その是非は観客次第だろう。
でも、映画を見ることは答え合わせではないので、悪しからず。
ちなみに、ジンギスカンは何事もなかったかのように美味しくいただきました。
あと、『LAMB』を見る前に『さかなのこ』を観た。
とてもいい映画だったんだけど、かなり語りたい映画だし、もっとみんな語ってるだろうから『LAMB』にしたっていうのもあります。
そんな9月下旬の映画でした。
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