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『ある精肉店のはなし』

先月のことになりますが、とある上映会で『ある精肉店のはなし』というドキュメンタリー映画を鑑賞しました。

スーパーや焼き肉屋さんに行けば、当たり前のように目にする赤身の牛肉。多くの人が日常の中で美味しくいただいていると思いますが、そのお肉がどうやって作られているのかご存知ですか?

この作品は冒頭からその答えを突きつけてきます。屠畜場へと牛を連れていき、丁寧に、手際よく手作業で行われる解体作業。素早く血を抜き、内臓を取り、「牛」という1つの命が、見えない境界線を超えて「肉」という商品へと姿を変えていきます。

そりゃあ牛肉だから……と頭ではわかっていても、実際に見るとなかなかに衝撃です。

人間に食べられる目的のために育てられ、人の都合よって寿命を全うする牛たちを目にしたとしたら、あなたの心の中に浮かぶ言葉は何でしょうか。

命を奪うなんて残酷?かわいそう?

この作品を目にすると、そんな見え方も少し変わるかもしれません。


仏教の影響なのか、日本には古くから肉食を忌諱する風潮があったようです。江戸時代には「生類憐れみの令」なんて法令も作られました。そのせいなのか、このドキュメンタリーに登場する精肉店の一家も差別を受けながら生き抜いてきた歴史がありました。

でも淡々と迷うことなく作業をこなす姿や、カメラの前で見せる笑顔はとても輝いて見えました。常に命の重さに触れてきいるからこそ、生きることの本質を知っているのでしょう。

普段口にしている食べ物から私たちは命をいただいて生きています。しかし、そのことを忘れて死を意識から遠ざけることで、生きる意味までもを失っているのかもしれません。


『ある精肉店のはなし』は全国各地の映画館やイベントなどで上映されています。ご興味有りましたらぜひご覧になってみてください。

『ある精肉店のはなし』公式ホームページ


Photo by José Ignacio Pompé on Unsplash

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