マガジンのカバー画像

🔥勝つための思考と行動~東洋の英知「孫子の兵法」

東西文明が交代期にある今、国際政治も会社経営の現場も、鎬(しのぎ)を削る戦いの場となっています。食うか食われるかの陣取り合戦が起こっているのが、世界の現実です。 必要なことは、…
これからお届けする【勝つための思考と行動~東洋の英知「孫子の兵法」】は、現時点で書籍化しておりませ…
¥500 / 月 初月無料
運営しているクリエイター

#勝つための思考と行動

【孫子の兵法・その11】〜「勝算が多ければ勝ち、勝算が少なければ勝てない」〜この見通しを立てることは容易ではない。

勝てそうか、負けそうか。戦力が互角でない限り、それは開戦前に決まっています。いや、実力が伯仲していても、勝算を多く得られるタイミングというものがあります。 指導者の役割とは、戦う前に勝算をよく観て、決断を下すことである。古代のチャイナでは、開戦・出兵の前に、王の祖先の霊廟で会議が開かれました。それを「廟算」と言います。「廟」は霊廟や宗廟の廟で先祖を祀る社、「算」は算略や算画の算で【計略】のことです。

【孫子の兵法・その10】 非情とも言える心理戦は、日本人の苦手とするところだからこそ、むしろ知らねばならない。

「裏をかく心理操作」である「詭道」についての説明が続きます。 相手から手を出させよ 相手が欲するエサをちらつかせて、相手から手を出させるやり方です。わざと弱点を作っておいて「これなら勝てる」と思わせ、そこへ敵の攻撃を誘導する方法でもあります。 (勝てる)チャンスを待て それから、「混乱していればそれに乗じて奪い取れ」ば良く、敵が「充実しているときは防備に努め」ひたすら隠忍自重し、敵が「強ければ真っ向からの戦いを避け」てチャンスを待てばいいのです。21世紀の国際政治にお

【孫子の兵法・その9】 心理戦から戦いは始まっている!

戦争は人間が起こすものですが、そもそも人間は心の動物です。だから戦いの基本は、心理戦にあるということになります。駆け引きや腹の探り合いなど、心理戦から戦いは始まっているのです。 ▼何のために「裏をかく」のか?「裏をかく心理操作」のことを「詭道」と言います。「詭」は裏をかいて人を欺(あざむ)くことであり、「道」はその法則や方法、手段のことです。 「裏をかく」こと自体は卑怯な行為であり、正々堂々と戦わねば、勝っても意味が無いのは当然のことです。戦争にも、戦時の法や、戦いのしき

【孫子の兵法・その7】 優勢なのはどちらか~それを見極める七つの視点

一に道、二に天、三に地、四に将、五に法。「五事」は勝つための基本です。これらを基に、孫子はどちらが優勢であるかを見極めてまいります。 勝負は戦う前から決まっている。勝敗は時の運とか、戦ってみなければ分からないなどと言います。ところが孫子は、戦う前から勝負は決まっているものだと指摘します。 それを見通すポイントが七つあります。 一、どちらが道によって国家をまとめているか一つ目は、「君主は、どちらが道によって国家をまとめているか」です。組織のミナカ(トップ)が道(原理原則)

【孫子の兵法・その6】 こんな程度のことなら、とっくに知っているさ、と思ったあなたへ

「法」とは何か勝利を得るための基本である「五事」の最後は「法」です。 「法とは何か。それは、軍隊の編成、職分、主軍の用務などについての、【組織的規律】のことだ」と孫子は説きました。 ●「軍隊の編成」の原文は「曲制」です。 曲には、細かい事柄、すみずみまで詳しい、という意味があります。曲制は、軍隊における詳細な組織編成のことです。 ●「職分」の原文は「官道」です。 官道の「官」は官職、「道」は制度のことです。将士・兵卒それぞれの職分、即ち役割分担を意味します。

【孫子の兵法・その5】責任感や使命感があれば、威厳は必ず備わる!

「地」とは何か?「地とは何か。それは、距離が遠いか近いか、地勢が険しいか易しいか、地域が広いか狭いか、地形が高いか低いかなど、地理的条件のことだ」とあります。これらは、戦いの場所を知っておくことの重要性を示しています。 戦場までの距離は遠いのか近いのか、そこは険しい地なのか平らな地なのか、範囲として広いのか狭いのか、地形として高地なのか低地なのか、といった地理的条件を掴んでおけと。 何かの店を出したり、事務所を構えたりしようとする場合も同様です。主要駅までの距離、人口の

【孫子の兵法・その4】政治理念や国家目標がしっかりしていないと、内部から崩れていく

では、少しずつ解説してまいります。 「道とは何か。それは、国民と君主が同じ意志を持つかどうかという、政治的条件のことだ」という文についてここで言う「道」は、儒教的な「人の道」とは違います。 「国民と君主が同じ意志を持つための道」であって、「上下が一体となれる理念や方針、組織が一丸となって進んでいける目標」のことです。 それは、戦争以前に求められる国家統一力の軸と言えます。 これら政治理念や国家目標がしっかりしていないと、内部から崩れていくことになります。前戦で戦う兵

【孫子の兵法・その3】どちらが勝つかを見抜くための五つのポイント

『孫子』十三篇の最初は「始計篇」。「計」は、「言」と多数を表す「十」の合字(会意文字)で、口で言いながら、まとまった数を計りかぞえることです。 計略や計画という熟語があるように、情勢をきちんと計り、それを表明することによって物事は実現するのです。 「始計」は、始めに計るべき基本、即ち開戦の前によく考察しておくべき課題という意味の篇名です。始計篇には、勝つための基本となる五つの要素や、勝算の見極めの重要性など、総論的な内容が記されています。 《孫子・計篇その一》孫子は言う

その2 ナポレオンの座右の書『孫子』が、多くのリーダーを魅了した理由

かつてチャイナに、春秋時代と呼ばれる時代がありました。 周王室の権威は次第に衰え、諸侯は互いに対立し、覇者が次々入れ替わります。下の身分の者が上の者を凌(しの)ぐという、下剋上が盛んな乱世に入っていたのです。諸国は、いかにして自国を守るかに知恵を絞らねばならず、いわゆる兵法の専門家が登場する時代になりました。 孫武の登場呉王闔廬(こうろ、在位前514~497)に仕え、見事な働きを残した孫武もその一人です。斉国出身の孫武は13篇の兵法書を著しており、既に兵法家として知られ

最高のインテリジェンス「孫子」・その1

食うか食われるか?の陣取り合戦に、我々は絶対に負けてはならない戦前から続いていた浜松の老舗百貨店が、平成13年(西暦2001年)多額の負債を抱えて経営破綻。全従業員が解雇され、百貨店発行の商品券は紙屑と化しました。地権者が入り組んでいる跡地は未だに更地状態で、浜松の中心市街地衰退の象徴となっています。 原因は、無理な増床による固定費増大にありました。浜松駅前に大型百貨店が進出してくるというので、規模で負けないための拡大策を採ってしまったのです。 増床して「新館」を開店し