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世界広がる食紀行

旅に行くと、好きな食べ物が増える。

熱海に行った。
老舗の干物を買って帰った。
分厚い身は半生で、軽く炙ると油がじゅわっと零れる。
金目鯛の干物は高いが、絶品で、翌日は残った頭と骨で味噌汁を作った。
今でも年配の方へのお礼として、熱海の干物を贈っている。

イタリアに卒業旅行で行った。
テイクアウトしたきのこパスタが、香り高くておいしかった。
お店に戻って標識を見ると、portinoと書いてある。
調べたらボルチーニ茸というキノコらしい。
それから、ポルチーニ茸を見ると必ず頼むようになった。
安っぽいお店で食べたラザニアは、忘れられないほど濃厚だった。
こんなにラザニアとはおいしいものか、と行く先々で頼んでいるが、未だにあれを越える感動に出会えていない。

トランジットがフランクルト空港だった。
お腹が空いていたので、4人で一つだけホットドッグを買った。
皮が厚く、パキッという音と共に肉汁があふれ出した。
パンは外側がカリカリで、中はもっちりふわふわ。
肉汁をパンで受け止めながら、皆で夢中で食べた。

フランスに学生の頃行った。
日本人街のブックオフの店員に聞いた、鴨肉料理の店に入った。
どれもこれも高くて、委縮しながらどうにか頼んだ鴨肉のペースト。
濃厚なコンビーフみたいだな…と思ったが、何かの際にあの味に会いたくなる。
せっかくフランスに行ったのだからと、フランスパンを2,3本買ったが、どれもこれも素晴らしかった。

東京には時々行く。
必ず、芋ようかんとシウマイを買って帰る。
時々、チーズサンドクッキーも買う。
いつ食べても、変わらぬ味で、安心する。

ベトナムに住んでいる友だちに会いに行った。
その子の紹介してくれるお店はどれも美味しくて綺麗だった。
バインミーとは衝撃の出会いで、カリカリふわふわのパンにぎっしり野菜と、パクチー、ハムが詰まっていた。
食べるとじゅわっと旨味が広がって、しゃきしゃきとした歯ごたえが楽しく、パクチーが良いアクセントになっている。
パクチーは苦手だったが、ベトナムに行ってから大好きな食べ物のひとつになった。
自分たちで見つけたフォーのお店は、魚介の出汁がとってもおいしくて、皆で汁を飲み干した。
翌日半分がお腹を壊した。

小豆島に行った。
そこで買ったレモンオリーブオイルで茄子を焼いて、岩塩を振った。
良く油を吸った茄子からさわやかなレモンオリーブがあふれ出る。
シチリアでもレモンオリーブオイルを見つけて、「茄子を焼くと美味しいよ」とお土産に買って帰った。
贈った友だちは、本当においしかったと喜んでいた。

2度目のイタリアは、南の方へ行った。
旨味が詰まった乾燥トマト、深い味わいのバルサミコ酢、そしてスフォリアテッラ。
スフォリアテッラは何枚も薄いひだを重ねてある、パイのようなお菓子。
一口かじるとサクッと層が崩れて、中にはレモン味のクリームチーズが入っていた。
また、絶対出会いたいと思ったお菓子だった。

ドイツでは白ビールを飲んだ。
出されたヴァイツェンは常温だったが、冬だったのでちょうどよかった。
小麦の香ばしさとは裏腹のあっさりした飲み口。
巨大なグラスに入れられて運ばれてきたが、すいすいと飲み干した。
ソーセージについていたザワークラウトが好みの味で、すっぱいキャベツの本当のおいしさを知った。

福井の旅館で刺身盛を食べた。
大人数で行ったので、大きな船盛だった。
ウニは一人1つあって、まったりと甘く、苦みが全くなかった。
どの魚も鮮度が良く、油が乗っていて、食べ過ぎて友だちに怒られた。

台湾で食べたお粥は、丁寧な出汁が取られていて、お粥の概念を覆すものだった。
温泉で食べた鮑のお粥も、屋台で食べたカジキのお粥も、どちらも忘れ難い。
身体がほっこり温まって、満たされた気持ちになった。
市場で出されたナツメとクルミは、相性が抜群だった。
ナツメはあまり好きではなかったが、クルミの歯ごたえと風味が加わると、大変好ましかった。
火鍋に入っていた、鴨の血の塊は、プリンパリンと口の中ではじけた。
未知の食感で、火鍋にとても良く合った。

旅に行くと、好きな食べ物が増える。
知らなかった食べ物を知り、苦手な食べ物を好きになる。

綺麗な景色をみるもの好きだ。
雄大な自然に出会うと、心の奥から綺麗な感情が溢れてくる。
それと同じくらい、おいしい食べ物に出会う体験は、私に感動をもたらす。
私の世界を広げてくれる。

さて、次はどんな食べ物に出会えるだろうか。
心動かす経験になるだろうか。




ありがとうございます。