あなたではない、3【feat.レッド】
混ぜるなキケンの文言が真っ赤に点灯する。
リズムが狂う。
続くラリーにはリズムがある。おそらくななコの本質はストローカー。私とおんなじ4拍子。
リズムに乗る。上手くいくほどにバフのかかっていくひここは、徐々にリズムを上げていく。純粋な3拍子。そこに私が合わせられないのが、たぶん乗り切れない正体だと思う。ずっと互いに(ついでにi野コーチも)じれったい思いを抱えている。
その点4拍子の戸塚はそのテンポに影響されない。淡々と自分のリズムを刻み続ける。基礎値が高いから容易くブレない。同じ場所に居合わせながら別の曲を聞いている。それもまた一つの共存。
何はなくともあった自信。
ドミノ一つで容易くブレる。
今回、1STの確率こそよくなかったものの、サーブの質としてはグッと向上したように思う。相手の動きに合わせて配球もできた。が、ゲームを作ろう、組み立てようとする時、返した一本目を叩かれてきたからこそ、上手く行っても「それはひここが前を張ってなかったからだ」と思ってしまう。冷静さを欠く条件下で同じことができたか、それは実際にやってみなければ消えない不安。今回戸塚とのサービスゲームは完敗だった。
それでも大きな収穫があった。以前は知ろうともしないのに弾くという「力による支配の拒絶」がための「従わない」で一定のパフォーマンスを維持した訳だが、今回は相手を受け入れた上で(半分自分を取られながらも)同じく力を発揮できた。繰り返すが、バケモノは対戦相手はもとより、味方も圧する。だからこそ、このことは純粋な自信になる。そうして共に戦おうとする男自身が(求めてないだろうけど)賛同を得ることで少しでもやりやすくなるといい。
レッドの「好き」は分かりやすい。ちゃんとおかしい。それはきっと想像するよりずっと尊いもので、だからこそこういう人にこそテニスをしやすい環境を整えてほしいと思ってしまう。鬼とかナオトとかひこことか「このクラスはバケモノ認定を受けた人のみ入ってOK!」みたいな。きっとものすごい化学変化が起こる。受ける刺激の量が桁違いだから。
その一方で、一旦相手を受け入れたからこそ分かったことがある。
レッドは根本的に合わない。
ストローカーという同質に加え、影響力。
私は縦に潜りたいので、イチイチ浅瀬に引きずり戻されると呼吸の仕方が分からなくなる。単にやりづらい。故に、今度こそ正式に貼り付ける。私はあなたに従わない。以後同じように組むことがあっても、同じように「はい」と返事をしても、それだけは変わらないだろう。
あなたではない。それが分かったというのは大きい。無理に自分の形を変えずに済む。
「ありがとうございました」
ベンチの隅と隅に座っていた相手。
正面から向き合って、互いの声が重なった。
またどこかで、と思う。私自身、まずは打点、テイクバックのタイミングの見直しから入る。
いてよかったと、今なら安心して思える。
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