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是非知って欲しい作品群。やさしくて面白くてジンと来るもの。いいなと思ったイラストも。
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#読書

【読書感想】少女は卒業しない/朝井リョウ

本屋さんでちらちらと見て気になっていた作品。 偶然、この映画を見に行くことになって、 その映画があまりにも良かったので、 すぐに本屋さんで原作を買いました📕 映画では、取り壊しが決まった高校の 卒業式前日と当日を舞台にした群像劇として 4つの恋を取り上げられていました。 学生の時は、分かりやすい節目として『卒業』があって 皆で同時にその節目を迎えて、晴れやかな気持ちと 名残惜しさと感傷とで、いつも通りでいることも難しかった 落ち着けないイベントを過ごしたものだ……と 懐か

わたしと、『母性』と、わたしの母性。

湊かなえさんの『母性』を初めて読んだのは 2年前の12月。わたしは25歳で、娘は3歳。 離婚を機に二人での生活を初めて 1年ちょっとが経った頃だった。 2020年12月当時、娘が保育園に行っている時間 =わたしの勤務時間、で 仕事のために保育園を利用しているのだから 至極当たり前のことなのだけれど、 その当たり前は、同時に わたしには「仕事」「家事」「育児」の どれかに属する時間しか存在しない ということでもあった。 それでも、性格の合わない大人と暮らし、 合わないものを

谷崎潤一郎『春琴抄』読書感想。

盲目の美女と奉公人との純愛モノということで、 健気で儚げな女性を勝手にイメージしていたけれど 全然違っていて面を食らった。 小柄で色白、儚げな見た目なのに、 我儘で傲慢、おまけに嗜虐性まである女性。 けれど、読み進めるにつれ、徐々にこの人格形成の一因を“盲目“という身体的欠陥が担っているということが詳らかにされていく。 “盲目“を自分の中で負い目として感じており、元来のプライドの高さもあり、虚勢を張らずには世間と対峙することさえままならなかったのではないだろうか。 大地