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近年の火山噴火で降り積もった火山灰の分布図

過去の火山噴火で地表に降り積もった火山灰は、少なくとも厚さ1ミリないと地層中に保存されるのはむずかしい。保存条件がもっともよいのは泥炭地だ。いっぽう、目の前で起こる降灰は、0.1g/m2の微弱でもひとに気づかれる。1g/m2なら、自動車の上などきれいに掃除された平面上に火山灰が積もっているのが観察できる。

1000g/m2が1ミリだから、1g/m2は1ミクロンである。目の前で起こる噴火は、最薄火山灰層の1000分の1にすぎない1ミクロンの積灰でも計測できるというわけだ。だから、単位面積当たりの火山灰重量を測って地図にして蓄積すれば、火山噴火を理解するために貴重な基礎データが得られる。

いまは火山が噴火すると、積灰写真がSNSに多数あがる。その写真を見て積灰量を見積もれば、迅速に火山灰分布図を得ることができる。そうやって作成した過去15年間11回の火山灰分布図を下に示す。


草津本白根山2018年1月23日、M0.5

2018年1月23日噴火地図。4800年前の三日月火口に長さ200メートルの噴火割れ目が開いた。紫着色は火砕流モドキ。火口から出た噴煙が熱上昇することなくそのまま風にあおられて振子沢から青葉山に駆け上がったのち、入道沢にはいって1.8キロまで達した。小さな太いオレンジ線は火山弾の到達範囲。500メートルまで。黄色線は降り積もった火山灰。等値線は100、10、1 g/m2。
23日噴火の積灰分布。等値線は100、10、1 g/m2。防災科学研究所の26日地図を利用した。降下火山灰の量は2000トン。近傍の火砕流モドキと火山弾を加えると、全噴出量3万トン。

新燃岳2017年10月噴火、M1.6

降り積もった火山灰。日ごとに表現。等値線は外側から 1、10、100 g/m2。

阿蘇2016年10月8日、M1.3

淡青0.1 g/m2、濃青1 g/m2、そして10と100 g/m2の等値線。10万トン。インターネットで公開された積灰画像とリモートセンシング画像のみを使って10月11日に作成。ただし、市町村の積灰有は福岡管区気象台発表による。この図での噴出量は10万トンになる。

阿蘇2015年9月14日噴火、M0.9

火砕流が到達した範囲(1.9 km2)。赤同心円の半径は、1、2、3 km。1.3kmまで到達。 火砕流が発生したのは9時46分30秒。 48分50秒には前進が止まった。継続時間は2分ちょっと。
火山灰が降った範囲。濃い青は1 g/m2 (550 km2)、薄い青は0.1 g/m2 (3000 km2)。

浅間山2015年6月16日噴火、M-1.4

橙線は1 g/m2。赤の同心円は、山頂火口中心から0.5、2.0、4.0 km。 400トン。主体は9時半ころだったらしいが、その後夕方まで降り続いた。

口永良部島2015年5月29日噴火、M1.4

24万トン、火砕流含む。

阿蘇2014年12月の1か月、M2.0

2014年12月の積灰。単位はmm、黄色線1 mmが囲む面積は95 km2。

御嶽山2014年9月27日噴火、M1.6

・火口(赤ダイヤモンド) ・火砕流(ピンク) ・火山弾(黄)火口からおおむね1km ・降下火山灰1cm(青線)。1cm線で測ると火山灰総量50万トン。 ・山小屋
1 g/m2と0.1 g/m2に色分け。いずれで測っても火山灰総量2万トン。

桜島2012年の1年間、M3.1

桜島2012年の積灰。黄色線は、10, 1, 0.1 kg/m2。鹿児島県データ。 1 kg/m2が囲む面積は1050 km2だから、2012年の噴出量は1300万トン。

新燃岳2011年1月26日噴火、M3.3

等厚線は4センチと1センチ。

浅間山2009年2月2日噴火、M0.3

浅間山から南東に伸びる灰色線は、火山灰が1g/m2降り積もったところを示す。インターネットで公開されている積灰写真と動画から単位面積あたりの火山灰重量を判定して作成した。この図から噴出量を計算すると2万4000トンになる。
産総研

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