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【感想】NHK『歴史探偵』第4回「葛飾北斎 天才絵師の秘密」を観ました

昨日2021年4月21日(水)22:30~23:15、NHKの歴史番組「歴史探偵」4回『葛飾北斎 天才絵師の秘密』を視聴しました。
この番組は、今まで放送していた「歴史秘話ヒストリア」の後番組です。
今回のテーマは、葛飾北斎の謎を解く。

本題に入る前に、スタジオの様子が違いますね。
なぜか、見慣れた「知恵泉」のスタジオから収録しています。
知恵泉の番組宣伝っぽい。
知恵泉も好きな番組の一つです。
一人の歴史上の人物に焦点をあてて深堀りする番組なので、人物次第で観ています。

①富嶽三十六景の大きな謎
富嶽三十六景の絵の中に、場所が特定できない絵が2枚あります。
「凱風快晴」と「山下白雨」の2枚です。

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見ての通り、上が「凱風快晴」で赤富士といわれ、下が「山下白雨」で黒富士といわれます。
凱風快晴は、北斎の代表作で有名です。
ですが、この二枚、どこから書いたのかタイトルにありません。
これ以外の富嶽三十六景の絵はタイトルに場所が入っていてどこで書いたのかがわかります。
なぜ北斎は地名を入れなかったのか。
まずはその場所を探ろうというのが謎解明の一つです。
最初は凱風快晴の赤富士です。
赤富士が観測できるのは山梨側が多いということで、山梨側の富士山マニアにライブカメラを観察します。
ここで新たな事実が判明。
実は凱風快晴の絵は木版画で、版によって色彩が異なるとのこと。
初刷は薄い茶色だということがわかりました。
赤富士の山梨側では無さそうです。
ということで、静岡側の市役所にライブカメラを設置して1か月観察してみると稜線がピッタリでした。
これを専門家に見てもらうと、時間の経過を一つの絵にまとめたのではないか、という見解が得られました。

もう一枚の山下白雨、黒富士です。
見ての通り、上は快晴で下は稲妻が走る大雨です。
番組は、空から見た富士山ではないかと推定します。
飛行機で観察してみると、富士宮上空の御坂山地が背景として合致しました。
専門家は、いろいろな所から見て自分の感じたものを絵にしているという見解です。

時間の経過といろいろな場所という、北斎の心の富士山を描いたので、場所の記載がないという結論に達しました。

[所感]まあ、芸術の世界というあたり、抽象的なものなので、描いた本人に聞かないことにはなんとも言えませんが、なんとなくそうなのかなあという感想ですね。
これはこれで、楽しく絵画を鑑賞できればいいです。

②巨大な波の正体は?
「神奈川沖浪裏」というこれも有名な絵画です。

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海外ではGreat Waveというのだとか。
描いた場所と思われる神奈川県横浜本牧沖に行ってみますが、波がなくよく分かりません。
一つヒントが。
三角波といって三つのポイントが重なると巨大な波になるらしい。
ということで、東大柏キャンパスの教授に聞きました。
実際に実験してみることになり、海上技術安全研究所に。
80m✕40mの巨大水槽で波の実験です。
何度も繰り返し実験し、ようやくハイスピードカメラが巨大波をとらえました。
押送船の模型を波に近づけるとアニメーションのような動きをしました。
北斎漫画を見ると、コマ送りの絵がありました。
北斎は、アニメーションの感覚で絵を描いていたことがわかりました。

③ゴーストライターがいた?
「富士越龍図」は北斎90歳の時の絵で、絶筆といわれる絵です。

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90歳の落款が押された絵が18点残っていて本当に本人の絵なのか謎の一つです。
死ぬ間際に十数点の絵を描けたとは考えにくく、ゴーストライターがいたのではという疑問が生じます。
番組では、北斎の娘がゴーストライターではないのか、という推理です。
北斎の娘は、お栄といい応為とも書きます。
生臙脂(しょうえんじ)という赤色の染料があって、その作り方の手紙が残っています。
「扇面散図」は、お栄の花の絵に似ているとか。
お栄は優秀なアシスタントで、父親の手助けをしていたのです。
「北斎仮宅之図」には、晩年の北斎とお栄の様子が描かれています。
 「富士越龍図」は、北斎とお栄の合作だった、というのが結論です。

北斎は80歳を超えてから絵に年齢を入れました。
臨終で、『天が私の命をあと10年、いや、あと5年保ってくれたら、私は本当の絵描きになることができる』と言ったそうです。

おわり

葛飾北斎という芸術家の歴史なので、客観的な検証分析というのが難しい中、波の実験を行ったり、航空測量を使ったり相当チャレンジャブルな取り組みでした。
北斎は、特に謎の多い生涯なんですよね。
歴史の研究に科学技術を連携した先進的な取り組みを紹介するのは、素晴らしいですね。
2006年頃、ボストン美術館の肉筆浮世絵展を見に行ったことがあって、北斎をはじめとした日本の江戸後期の絵画や版画の素晴らしさは、圧倒的でした。
海外での評価が高いのは、日本の誇りです。

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