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新加入選手を考える~星キョーウァン・表原玄太~

超過密シーズンが終わり、ひとまずJリーグから離れた生活になるかと思いきや……年末年始も移籍情報が絶えず飛び交っており、高校サッカーでも試合のすばらしさに加えてロングスロー論争が繰り広げられるなど大盛り上がりのオフシーズンとなっている。

急いで情報をインプット→アウトプットしていきたいところだが、1人1人の情報量は極力落とさずに新加入選手について考えていきたい(1月には終わらせたい笑)

■規格外のフィジカルを持つ期待の超新星「星キョーウァン」

横浜FCで去年デビューを果たした大型ルーキーが、2年目は山雅の一員としてJ2を舞台に飛躍を目指す。

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コンゴ人の父と日本人の母の間に生まれた星。キョーワァンという名前はコンゴ系の名前で「賢い」という意味になるのだとか。

小学校の時はずっとカードゲームをしていたそうで、サッカーは放課後遊ぶ程度。本格的にサッカーをはじめたのは中学校からと言うが、南河内二中3年時には春夏とも栃木県大会を制し、わずか6年ほどで選手権でも注目を浴びた名門・矢板中央の主将として全国大会に出場している(ちなみにこの代の矢板中央は相方CB・川上(群馬)、FW・二見(琉球)も大学を経てJ2に参戦している)。チームは3回戦で敗退になったものの、180㎝を超える長身と50m走6.2の快速でインパクトを残し、青森山田・常田とともにこの大会の優秀選手に選ばれている。

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大学では山雅も関わり深い駒澤大学でプレー。3年次にはチームをインカレ準優勝に導いて自身も大会のベストディフェンダー賞を受賞するなど輝かしい成績を残し、高校時代に続いてキャプテンに。高校時代は粗削り感が強かったが、大学時代の実績を見るとプロ入りも納得。川崎の練習参加もしたようだが、横浜FCに加入を決めた。

内定の際は「身体的に強く、空中戦で力を発揮しセットプレーでも相手の脅威となれる選手。最終ラインでのラインコントロールと統率力に優れ、気持ちも強くチームが苦しい状況でも、仲間を鼓舞し、勝利のために全力で戦うことが出来る」選手と紹介されているが、大学時代の仲間からも「高さ、強さは大学トップレベル」と評されるようにフィジカル面は日本の同世代でも恐らくトップクラス。競り合い、走り合いはJ1でも十分通用しており、スライディングも得意としている(これは学生時代から得意だったという)。

(盛り上げっぷりもさすが元キャプテン……)

参考にしている選手もカリドゥ・クリバリやダビド・ルイスと話していることからも分かるように、賢く奪い取るというよりは激しく当たれる選手を目指しているよう。自身でも駆け引きをしてくるタイプより身体を寄せてくるタイプのほうが得意と自覚しており、実際L・ダミアンやオルンガのような「反則外国人」的な選手ともプロ1年目で渡り合う対人能力を持っていた。その反面、佐藤寿のような"駆け引きを得意で懐に潜り込んでくるような選手"への対応がこれからの課題になってくるかもしれない。

さらに課題という面ではプレーを見ていると、ビルドアップにおける判断力や体の向きの面でまだまだこれからになってきそう。決して下手というわけではないが……ビルドアップを向上する意図の補強でないのは明らかである。

そして、山雅での起用法。去年は第2節からレギュラーを掴み、計9試合出場しているが7試合は3CBの右、1試合は2CB、1試合は試合終盤の大作戦要員(?)でぶっつけのFW起用。ちなみに4バックにシステム変更をしたことでほぼ出番が無くなってしまっている。
素質面・経験面ともに3バック4バック、どちらでも対応可能だと思えるが一番見えるのはやはり「3CBの右」ということになってきそう。橋内大先生のコントロールの元、J2では反則級になりうるフィジカルモンスターの星を無双させるという姿は想像できる。タイプは違うが昨年ブレイクした大野は強力なライバルが現れたことになった。個人的には去年からの3CBで入れ替えがあるなら右CBの大野と星のところだと思っている……がこのポジション争いによる大野の更なる飛躍にも期待したい。

■"2代目エヒメッシ"から"松本のメッシ"へ「表原玄太」

徳島ヴォルティスから復活を目指す若手ドリブラーが加入。

小、中学生のころは地元の徳島ヴォルティスを熱烈に応援したという表原は徳島ジュニアユース時代から生粋のドリブラー。この時は組織的な守備も知らなかったそうで、高校で神戸U-18に加入してからパスを出すことや守備の原則を学び、3年生では10番としてチームを牽引。高円宮杯U-18プレミアリーグウエストで優勝するなど充実の高校生活を過ごしたが、この年のトップ昇格はGK吉丸(今季から北九州)のみと叶わず、J2の愛媛に加入することになる。

しかし、この選択が功を奏す。当時、愛媛の監督だった石丸監督にその才能を見出され、ルーキーイヤーからプロの舞台で躍動。開幕ベンチ入りを果たすと第4節の東京V戦でJリーグ初ゴールをマーク。石丸監督からは「ファーストタッチはチームの中で一番うまい。狭いスペースでプレーができるし、ポジショニングもいい。まだ18歳だが、プロの世界で十分にやっていける」と太鼓判を押されている。

そんな彼のプレースタイルからついたあだ名は、かつて所属したこともある齊藤学にかけて「2代目エヒメッシ」。165㎝と小柄ながら細かいステップ、リズミカルなドリブルで相手DF陣を引き裂き、チャンスを演出する仕掛け屋。スピードに乗ったらDFはとにかく足の出しどころがなく、止められない。

その後、阪野や藤田、浦田らともチームメイトとしてプレーした愛媛での3年間に特に大きなインパクトを残して、引き抜かれる形となったJ2の湘南では優勝・昇格も経験している。

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ただシュートまではいけるのになかなか決められないというのも本家とも似ているかもしれない……。

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800分以上出場した年を見ると、愛媛1年目はシュート成功率4.3%、愛媛3年目は3.0%、湘南1年目も20試合で36本のシュートを放つも0%という結果に終わっており、最高は徳島時代の7.7%だがこの年はWB起用でシュートの本数自体が13本と少ない(参考までに同じようなポジションの両WB鈴木・高橋は7.7%、前は6.7%、杉本11.6%、塚川21.4%)。

ややネガティブなデータになってしまって恐縮だが、あえて数字をあげてしまうと90試合4得点7アシストという数字は動きの良さや高い期待値を考えるとやはり物足りない。愛媛、湘南、徳島と出場するとインパクトを残しながら、それぞれのチームで1年目がピークになってしまうのはどういうわけか理由ははっきり見つけられなかったがこのあたりはあるかもしれない。

が、逆に言うと水モノでもあるここの数字の部分を向上できれば、まだまだ24歳、さらに飛躍できる選手である。チャンスメーカーとしてはすでに高く評価されており、これまでの監督からもそのポテンシャルは認められる。サポを沸かせてくれそうなプレースタイルの表原がどれだけシビアな争いの中で結果を残せるか。この移籍が転機となったと言ってもらいたいところである。

山雅での起用法は3バックなら右WBを予想する
愛媛・湘南時代はシャドーとして頭角を現した表原だが決定力やプレー関与の少なさはたびたび指摘されており、徳島時代に上下動できる運動量とサイドでの打開力をよりシンプルに活かせる左右WBで新境地を開拓。先ほどのシュートデータからも分かるようにプレー時間あたりのシュート数は激減したが、その分プレー時間は増えた。前をむいてプレーをさせたほうが輝くのも理由としてはある。

一応、IH(シャドーボランチ)の適正もありそうだが、去年の352の場合、塚川の時と同様に3421時以上にIHの守備でのポジショニングがよりシビアである。徳島での成長もあるかもしれないが守備での戦術理解度はこれからの選手なので、それ以上に得点・アシスト力があれば変わってくるが現状そこも足りていないので他の選手との兼ね合いも見てIHより右WBという予想となった。

今年の編成は田中パウロ、表原、外山と流れを変えられるドリブラーが増えたのが特徴的。柴田監督が求めているタイプであることは間違いなく、この表原を始めとするドリブラー軍団にどのようなタスクを与えられるのか、今から楽しみである。

(画像は駒澤大学スポーツ部、横浜FC公式、Jリーグ公式、徳島公式、徳島新聞より)

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