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沼津戦レビュー~歓喜の後の・・・~


<スタメン>

・松本山雅

前節は信州ダービーで長野に勝利。結果・内容共に得ることができた山雅はスタメンを1人変更。
左SBで先発だった龍平がベンチ外となり、下川が再びスタメンに。

ベンチは滝が外れ、国友、パウリーニョがメンバー入り。

・アスルクラロ沼津

ここ最近は3連敗と苦しんでいた中で富山に劇的勝利をおさめ、久々の白星をあげた沼津はスタメンは1人変更。
ドリブラーの森に代えて、パスを引きだして起点になれる鈴木拳士郎が先発に回り、右に津久井が入る。

ベンチは変更なし。

<記録>

・ゴール(47)
18:小松
6:菊井、村越
3:滝、野々村
2:パウリーニョ、鈴木、野澤
1:榎本、山本、渡邉、藤谷(、OG)

・アシスト(32)
8:菊井
4:小松
3:下川、常田
2:山本、滝、米原、渡邉
1:鈴木、野々村、榎本、住田、村越、安永

・警告・退場(35・2)
6:菊井※
4:野々村※、安永※、
3:小松、米原
2:山本、パウリーニョ、滝、藤谷、常田
1:小松、住田、榎本、下川、喜山、渡邉、安東、村山、村越※(武石C※)

<総括>

■噛み合わないプレスと光明

・前節の勢いが空回りプレスに

共に前節勝利を挙げた両者。4月に行われた前半戦でもお互いのアグレッシブな姿を見せて3-4の打ち合いになり、スコアの動くゲームとなったが、今回は勝ち点差1で、互いに昇格争いの境界線上。また、山雅にとっては準備が非常に難しく、課題としても挙げられていた「ダービーの翌戦」ということでどのような入りをするかは注目だった。

そんな中、序盤流れを掴んだのは沼津。
キックオフでのロングボールのセカンドボールを拾うと、そのまま得意の流動的なポゼッションサッカーでゲームを支配する。

特に右サイドは本職がSBの濱が入ることでより特徴的な立ち位置に。濱がSBのような入り、安在は内側で偽SBのような振る舞いに。大外は津久井が張っていたり、時には下りたりしてボールを引きだす。

山雅はまずは対4バックのセオリー通り、2CBに2トップを当てる形でハイプレスをかけに行くが、菊井から濱までの距離は遠く、アンカーの菅井がフリーで受けて前を向けるという状況に。

ここにボランチが喰いついていこうとしても持井や安在、徳永の誰かはフリーになってしまうし、そうなることは沼津側は恐らく織り込み済みだったため、ダービーのようなバチバチの球際勝負をさせてもらえないどころか、喰いついたところでスペースを使われて、そこから中盤のスルーパスやドリブル突破を自由にさせてしまう時間が続く

沼津は基本的な役割やレーン分けだけ決められているが、そこからは選手の判断で自由に動いていて、徳永が低い位置に下りてきたり、持井が飛び出したりして臨機応変だったのに対して、山雅はまず誰がどこに行くかプレスの基本形を決めかねている感じで明らかに後手を踏んだ入りになってしまった。

・"臨機応変さ"が上手だった沼津

こうなるとハマっていないのでプレスは一旦諦めるor前の人数を増やすという選択肢があったが、10分経過した②でプレッシングの形を変える。

そこまでの"対4バック"の形(2CBに2トップを当てる)ではなく、濱が大きく開くのを見越して"対3バック"(2トップが縦並びになって3トップのような形)にして相手の最終ラインに当てる形に。

これでも安在や徳永、時には持井が下りてきてボールを引きだしていたため、"ハマってる"とは言い難かったが、一旦チームとしての意思表示は固まったように見えた。混乱状態の中、ここの整理だけでもできたのは1つの成長だろう。

だが、そこも沼津が1枚上手だった。
得点シーンではこれまで使ってきた右の可変ではなく、大迫を高い位置に上げて再び4バックのような形にしたビルドアップが起点に(もはや3バック⇔4バックの概念は有って無いようなものだったが……)。

ここで大迫へはボランチの安永が対応、その分米原がスライド。そこから相手のタッチミスでルーズボールになるも勢いを持って潰しに来た相手に再度ボールを奪われてしまい、逆サイドに。

下川の対応やニアを抜かれた村山のポジショニングなど万全ではなかったとはいえ、左SB大迫が高い位置を取っていることを見逃していた確認不足や試合が始まってから続いていた「プレッシングの整わなさ」やそれによる「二列目の数的不利」を使われてついに仕留められた失点となった。

・積み上げを見せた同点弾

先制された後は一転、藤谷や山口の個人技、セットプレーの二次攻撃などで山雅が沼津陣内へと押し込む時間が増える。

同点に追いついた流れは26分20秒あたりのセットDFから。
相手の保持の時間が続いた中で下りてきた鈴木へ菅井が縦パス。ここに米原が喰いついてきたのでこれまでのように菅井に戻したが、そこから米原が勢いを加速させて猟犬のようにボールを猛追。

これをスイッチにチーム全体が押し上げることで、選択肢の無くなった菅井のボールを引っかけて、その後のボールは安在に拾われるも、小松・菊井・村越もこれを追うことで相手に前を向かせず、GKまで下げさせる。

さらにGKまで小松が追い込みをかけ、蹴ったボールを安永が拾って同点弾に結び付けた。

残念ながらその猛追はハイライトには残っていないが、今年の山雅が理想としている敵陣でのハイプレスからセカンド回収、そこからの早い攻撃が生まれたのは、その1つ前で"勇気"と"戦術眼"を持ってプレスのスイッチを入れ、沼津の保持を慌てさせることによってそのチャンスを生み出した米原自身の成長、チームの積み上げからと言っても過言ではない。

■問題は"際"だけなのか

・勢いを取り戻した沼津

こうして内容的には全く良くない前半を過ごしたが、スコアは同点、期待値的にも沼津を上回っており、これまでの試合と比べてもそれほど悪くない数値。見方によっては「悪いなりにうまくやり過ごした前半」という考え方もできた

J3 第32節 沼津 vs 松本のデータ一覧 | SPORTERIA

一方、先制点の場面も裏を返せば"個人の好判断"で、チームとして意図した形ではなかったので流れを掴むには戦い方の修正は必須だった。

後半に入ると、山雅もロングボールを多用しながら相手陣内へと攻め込む時間を作り、イーブンな攻め合いに。しかし、沼津も中山監督からの「失ってもチャレンジして取り返せばいい」と指示の元、プレッシングの強度を上げる。

勝ち越し弾も高い位置での奪取から。
安永がラフに入れたボールが相手に渡ったところから速攻開始。一度はシュートブロックで難を逃れたかと思われたが、再び拾われた流れで安永が交わされて、5vs6の数的不利に。最後はボックス内に6人が入っていた沼津の数的優位性とドリブルに翻弄されて被弾。軽率なボールロストや焦って奪いに行って交わされる場面など安永にとっては悔いの残る失点となってしまった。

ただチーム全体としても相手の圧力に押し返されて、ボックス内で数的不利の状況を作られていたのも見逃せない。沼津の選択肢の多さが"寄せきれなさ"や"判断のミス"に繋がっていたのも根本的な問題だろう。

・勝てない刺し合い

この場面などダービーの疲労を考慮してかベンチも早めに動く
65分にはキーマンだった山口と安永に替えて、野澤と住田を投入。相手のビルドアップに対しての根本的な解決にはなっていなかったが、自分たちの保持時には70分には野澤の抜け出し、71分には住田が可能性のあるミドルを放つなど攻撃を活性化させる。

そして、後半のターニングポイントになったのは72分の3枚替え。2点が必要な山雅は米原、藤谷、下川に代えて国友、渡邉、橋内を投入。沼津が交代カードを使う前に5枚の交代枠を使い切る。

後ろは4枚、前は5枚、菊井はほぼフリーマン状態の3-2-3-2。
ただし、相手の3トップ+2IHのプレスはハマりやすくなるので、自然と中盤省略をしてシンプルに前線にロングボールを送る攻撃が多くなっていく。

しかし、そこで山雅側でネックになっていたのはWG(WB)の裏のスペース。特に75分に津久井に代わって投入された右WGの和田。

スタートから出ている村越の裏へシンプルに抜け出して起点になり、常田や橋内が出て行くしかないというシーンが短い間に2、3度あり、ダメ押しとなったCKを獲得したのも和田のワンツーでの抜け出しからだった。

山雅の「点が欲しい時の3バックへのシフト」はカウンターのケアのために後ろを1枚増やす目的があるというのは度々言及されているが、3トップ+持井の4枚で素早いカウンターを仕掛けてくる沼津の攻撃を抑えるにはやや無理難題な部分もあり、わずか7分の間にその弱点を突かれてダメ押し点を取られてしまった形となった。

では攻撃で相手を押し下げられていれば良かったのだが、シュートで終われていたかと言われるとそうではなかったのも問題点。先ほども触れたように後ろから繋ぐには沼津がハメやすい形になっており、放り込みは前線のユニットが適しておらず、サイドからクロスを入れるにも疲れている村越と元々はサイドのプレイヤーでもない野澤に任せているのでは相手も守りやすかった(それによってCBのオーバーラップやFWがサイドに流れてくることもあったがこれは本末転倒な気もする)。

リスクはかけていてもそれに見合ったリターンが得られるのか?にはやや懐疑的で、岩手戦のように「火力(前線の個の力)はあるはずなのに刺し合いに勝てない」のは時の運などではなく、個人的には必然のようにも感じられる。

■再会の相手が

交代カードを使い切り、中の選手も混乱している山雅に対して、沼津は84分にCF川又、IH森と前線の2枚を、89分にはWG染矢と高さのあるCB井上の2枚を投入して前線の5枚を総替え。菅井をIH、濱をアンカーに上げ、本職の高さのCBを最終ラインに入れることで前線の運動量の担保と守備固めを行う。

結局大胆なファイヤーフォーメーションも実らず、1ー3のスコアを動かせないまま敗戦。残り6試合で8差と逆転昇格に向けては絶望的な勝ち点差がついてしまった。

人によって"逆転昇格の可能性"への見解が大きく異なってくるのは避けられない勝ち点差だが、そこの可能性に関わらず、次節相模原戦でやること、目指すことには変わりはないだろう

若手主体・大型入替でシーズンをスタートさせた相模原は前半戦こそわずか2勝、勝ち点14で最下位に沈んでいたものの、夏のウィンドーでJ3屈指の大型補強を行い、後半戦は状況が一転。未だ順位は下から2番目の19位だが、勝ち点を33まで伸ばし、後半戦のみの順位表では山雅を上回る10位につける(山雅は13位)※。

得点率は上昇(1.00→1.23)、失点率は(1.42→1.23)と得点・失点ともに大きく改善が見られ、攻守ともに安定感が増したように思える

鹿児島サポの疾風さんのツイート参考

前節のスタメンを見ても11人中4人が途中加入の選手
中でも存在感を示しているのがベテランの岩上と瀬沼の2人。前者はご存じの通り、卓越したサッカーIQと落ち着いたボールタッチ、代名詞でもあるセットプレーのキッカーとしてチャンスを創出し、後者はなかなか定まらなかったCFの軸として前線の起点やプレスのスイッチ役として脅威に。

さらに既存戦力の安藤翼がスーパーサブとして爆発中。ここ5戦では1先発ながら計5得点をあげ、一気にチーム得点王に躍り出る。シーズン全体で見ても6先発、900分程度の出場で9G3Aとコスパの良さを見せている。

試合の見返しはこれからなので……細かいことは書けないが、ビルドアップの中心は岩上であり、プラス3バックの捕まえ方、どのラインから捕まえに行くかは相模原戦の注目ポイントになる(あと群馬時代に恩返しやられてるので)。今年やってきた「堅守」を見せる意味でも高い位置で捕まえて前半戦の再現を見せたい。

END


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