ディルド物語

預言の子であるジョイジョーイの左腕には、細工の美しい腕輪が三本。
彼とエルフの間に生まれた子が、男子なら唯一世界を救える大賢者となるが、もし女子なら世界を滅ぼす魔性のものとなる。世界は二択で滅ぶ運命だ。
彷徨える塔の預言は、決して間違えない。

「腕輪によって命ずる!どうしようもなく発情しろ!」
「いきなりかァ!!」

腕輪の一本が金の砂になって崩れるのと同時に、敬虔なるエルフの女騎士、ロロイは顔を赤くして座り込んだ。

「フウ…ッ…貴様、龍さえ従える、貴重な隷属呪を…バカなのかァ!」
「真偽は分からんが、発情したエルフは男子を産みやすい、と聞いた!俺は、世界のために出来ることは全てやる男だ!!」

人間達に彷徨える塔の預言があるように、エルフ族にも決して間違えぬ、文字吐く蛇岩の託宣がある。彼が運命の子だということはもはや疑いようもない。クライロックの図書館から盗み出してきた隷属呪の腕輪がそれを証明している。

託宣。
ひとつ。ロロイは運命の子との同衾を拒否することはできない。ふたつ。彼女が純潔を喪うとき、不死の悪龍が復活する。
託宣の内容は決して避けられないが、記述は「悪龍が必ず復活する」ではない。彼女が処女でいる限り、託宣は不活性なのだ。彼女はずっと考えてきた。どうすれば託宣を回避できるのか。

「腕輪によって命ずる!美しきエルフよ、今、ここで俺と夫婦の契りを!」
「ンンン…ハァ…ンッ!」

男は単純だが運命的な間違いを犯した。また腕輪が砂に変わり、ゆらり、とエルフが立ち上がる。落ちる外套。すらりと美しい裸体があらわになる。

全裸のエルフは腰に魔道具を巻き付けた。託宣への答え。それは凶々しくそそり立つディルドー。擬似男根だ。彼女はこの日のために修練を積んだ。エルフは熱い吐息で彼を押さえつけ、囁く。

「夫婦の営み、女が挿入してはいけないとは決まっておるまい。完全な虜にしてやる」

ジョイジョーイはもがく。
残る腕輪は一本。

【続く】

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