見出し画像

2023年 8月の歌  題「失敗談」


朝一番食べ頃きゅうりを摘み取ると「おはようさん」と顔出す青虫 
スーパーでつくね芋見つけ嬉しくて亡母(はは)の好物だんご汁作る 
伊藤美枝子

失敗の代名詞あり我が憲法変えるに変えられぬもどかしさ
失敗は成功のもと慎重に大事の前の小事大切
今森貞夫

今日駐(と)めし場所を忘れてアラモアナの駐車場内うろうろ歩く
途切れずに道を渡れる人々を待ちいる車に蝶とまり来る      
鵜川登旨

大学の塔から眺める街と海ここに住む子の祝福を祈る
別れ際に「がんばるから」と子は言ったポピーの揺れる下宿の前で
大室やよい

何事もなかりしごとく胡蝶蘭の我を見つめぬ君なき今も 
保護のいる虫だと知らず駆除したりしモナーク蝶を今育ており
岡まなみ

「大丈夫」でもこちらには「一大事」医者と患者はかみあわぬまま
酷暑の夜雨降る音に窓に寄る日照りつづきの土ぼこりの香
小野貴子

間違って顔につけてた整髪剤老いの顔には何事もなし 
失敗は成功のもとその元が溜まり溜まって成功を待つ   
小島夢子

エーデルワイス

黄昏れて熱風のややおさまれば百日紅の色も沈みぬ
谷川の登山の道の岩陰にエーデルワイスに花揺れており 近藤秀子

雨上がり尾根をまたいで虹の立つ緑の山に見ゆるタコノキ
締め切り日八月の月空高くひとすじの雲静かに流れ
関本なつ

大枚をはたいて買ったRimenba しまった場所が思い出せない
裏庭にマンゴーの実の熟れゆくをマイナバードと競いて待ちぬ  
筒井みさ子

転ぶまい心に念じ杖にぎるわれはいつしか気弱になりて 
詩(うた)を詠み花木を愛でしベニシアさん逝きて残せり詩歌のかずかず 原 葉

ご飯どき蓋を開ければ米のまま炊飯スイッチ押し忘れてた
枯れ株の中よりシュッとカトレアの新芽鮮やか緑のつるぎ
藤代敏江

盆踊り縁日コーナー御神輿はマリンブルーの半被(ハッピ)でワッショイ
最終日のグランドパレード大トリはみんなが待った長岡花火      
三浦アンナ

経験を積んで手にした技となり失敗をすぐ忘れ去ること    
公園の暑さに倦みし木々の中でクマゼミだけが夏を謳歌す  
森田郁代

買い出しのリスト忘れて仕方なくビールとつまみ念入りに選ぶ    
明らかに地球が悲鳴を上げている梅雨は豪雨に風は熱波に       
山下ふみ子

笑い過ぎ外れ飛びたる胸ボタン君の足下に転がり行けり
笹舟にコンペイ糖を五粒のせ川に押し出す母の三回忌
楽満眞美

封印し忘れたはずの失敗が突如浮かんで「あっ」と声出た 
縮みし母童女のようなその笑みを午後の陽光(ひかり)がゆらりと照らす 
六甲もこ





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?