2022年10月の選歌


北方領土

金色の午後の光を編み込めばなお温かい靴下となり
藤代敏江

幼子はあまたのおもちゃに目もくれずクッキーの缶叩いて遊ぶ
筒井みさ子

玄関に走りいでたるチビ猫を髭の大工はそっと抱きあぐ
筒井みさ子

明け方にぺろんと顔をなめに来て私の夢に飛び込むアズキ
大室やよい 

訪れる人の年々減りゆきて草むす墓地に彼岸花咲く      
森田郁代

形見分けの母の着物に身を包み抜きいる衣紋に秋風のしむ
楽満眞美

母ねむる択捉(エトロフ)島の丘の墓地もはや渡れぬロシアの領土
原 葉

ひょっこりと碧い海から首を出し空の青さを吸ってゆくホヌ
大室やよい

入院せし義母の寝床にぬいぐるみそっと差し入れ快気を願う 
六甲もこ

玄関を開ければ待ちし姫ちゃんの二分は続く尻尾の「ぶんぶん」 
伊藤美枝子



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