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2022年8月の歌


アメリカネムの木の花

心地よきハワイの風はララバイかアメリカネムは葉を閉じており
久々に訪れし島ネムの木の葉は閉じそめぬ眠りに入りて
近藤秀子

夏の夜にまどろみとろり白い月風はゆらゆら羊を数えつ
カリカリのフライドチキン夏至の昼 緑の芝生にブランコゆれる 
関本なつ

永遠に眠りたくなる時おりに人間として生きているなら
愛してる何回言うの朝からね一日中の魔法の呪文
田中えり

眠るまで『三匹の子豚』読みくれし祖母の声音を懐かしむ真夜
戦火燃ゆる水惑星の片隅になすすべもなく画面を見つむ
筒井みさ子

満ち足りた眠りの後も気がかりな明日があるのか不眠症なる我に 
隣家よりウクレレの音流れ来て夏のゆうぐれコキ鳴きはじむ  
原  葉

寝ていても名を呼ばれれば尾の先をちょろり動かし返事する猫
ウィンドウに映る誰かと目が合った「あなたはだあれ?」
「あなた自身よ!」
藤代敏江 

新聞の写真に見覚え感じつつ記事を辿れば知人の訃報          葬式には参列をせむ四年ぶりの友との再会は悲しみの中      
三浦アンナ

盆までの用事のリスト前にして心折れたり天気予報に        
床に就き手足を伸ばすうれしさも腰痛に目覚める朝の多くなり
森田郁代

危篤なる百寿の母はうわ言でしきりに母呼ぶ子に戻りしか
母逝きて残せし句帳に読み耽り我が知らぬ世界垣間見へたり
山下ふみ子

風運ぶ梔子(くちなし)の香に酔いしれて眠れぬままに白き花想う
蛍籠に点滅しいる生を見つつ時の流れに身を委ねたり
楽満眞美

ユーチューブ見つついつしか寝落ちしてゴツンと額に落としたスマホ
筋書きは忘れたけれどなかなかに良い夢をみた 二度寝をしよう    
六甲もこ

眠れない 羊を数えて百匹目うつらうつらで夜が白みゆく 
草抜きの今日のノルマをやり終えて頬張るスイカの真っ赤な果肉 
伊藤美枝子

おん眠り雲居の奥に深きまま営みは新しき世へと始動する       
唐突に逝ってしまえり良き友は見舞いしバラも枯れぬというに     
今森貞夫

虹の立つハワイに帰り来しことをまどろみに知る機内放送 
コロナ癒え力いっぱい自転車を漕ぎつつ仰ぐ故郷の山   
鵜川登旨

悪態を仏のように聞き流し寝そべる夫に耳栓のあり  
仲間とのノリで試したジップライン悲鳴と共に滑り降りたり
大室やよい

プルメリア散れば芝生に花友禅他の花びらも色香を添える
カヌー去り海に太古の波の音ザブンサラサラサラ、ザブンサラサラサラ
大森久光

イビキかき眠るかにみえてニュース時に夫はカチッとリモコンを押す  
切られてもごみ箱の中に花咲かせ木立(きだち)あさがお生き延びむとす
岡まなみ

朝はゆっくりランチのあとは昼寝して夕陽に乾杯 良い一日(ひとひ)なりさっさとやればいいものをずるずると先送りしておろおろとする
小野貴子

またあした目覚める事を疑わず犬と遊んで疲れて眠る   
眠ろうとすればますます目のさえる夜半に広げるバイブル重し   
小島夢子



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