2022年7月の選歌
トマト苗まだまだ支えは要らないとうぶ毛の光る足でふんばる
藤代敏江
亡父(ちち)に似た翁働く駐車場用はなくとも車停めに行く
六甲もこ
耳遠くなれば周囲と隔たりて寡黙に過ごせし母の晩年
藤代敏江
手洗いにカサつく指にスーパーのビニール袋は固く口閉ず
鵜川登旨
老人とう響きに未だ慣れなくて顔のシミなど鏡に映す
小島夢子
コオラウを仰ぎ見る家(や)に住む女(ひと)の庭に桔梗の涼しげに咲く
筒井みさ子
遠出にも限界がある島暮らしぐるっと巡って二時間あまり
六甲もこ
小袋に菓子詰め木陰で広げれば遠足気分で話も弾みぬ
森田郁代
繊月(せんげつ)や二階の窓にもたれれば遠くのレモンの香気ながれ来る
小野貴子
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