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幻のマンゴーチャツネ

著者:杏ワイルダー

ハワイの人たちが楽しみにしている2月のイベントといえば、オバマ元大統領の母校でもあるプナホウスクールのカーニバル。毎年同校のジュニア生(日本の高校2年生)が中心となり、2月の最初の週末に開催されます。


今年は新型コロナの影響で、イベントは大幅縮小され、学生によるエンターテインメントも、バザーも、サイレントオークションも、アートギャラリーもオンラインで行われました。


プナホウカーニバルの名物といえば、なんといっても手作りの「マンゴーチャツネ」でしょう。


マラサダもポルトガル風ビーンスープも毎年販売テントに大行列ができる人気フードですが、同校の学生と父兄が一丸となり、さらにはお庭にマンゴーの木のある近隣住民の協力のもと、前年の5月から準備が始められるマンゴーチャツネは、カーニバル開始の5時間前(つまり午前6時)から並ばないと手に入れられないという人気商品です。


地元紙によると、毎年チャツネ作りには1万ポンド(約4500キロ)余りのグリーンマンゴーが使われるということです。キャンパス内に5月ごろからマンゴーの寄付を呼びかけるサインが掲げられ、オアフ島各地から毎年たくさんのマンゴーの寄付が、アロハスピリットとともに寄せられます。


「幻のチャツネ」と称され、私も「食べたことがある」という人にこれまで会ったことがありません。数年前からカーニバル前にオンラインで何個か先行販売されているそうですが、発売数分後には完売だそうです。


親戚の間では「チャツネが買えたときはみんなで分かち合う」という暗黙のルールができていますが、まだ分け前は回ってきません。夫の95歳になる大叔母は「今世では諦めた」そうです。


ならば私が。


今年は家のカレンダーというカレンダーに、オンラインでチャツネが発売される1月19日に、大きく赤字で「チャツネ!」と書き、当日は販売開始10分前の午前11時50分にアラームをセットし、コンピュータ前で待機しました。


そして…な、なんと…1ケース買えちゃいました。クレジットカード番号を入力するときは心臓バクバクでした。


2月最初の週末、通常は盛大にカーニバルが開かれているはずのキャンパスで戦利品をピックアップしました。

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"待機リスト"に入っている夫の親戚、向かいの家と3軒先の奥さん、娘のお稽古の先生、夫の同僚、家族のように親しくしている電気屋さんに差し上げて…気づいたら残り1個になっていました。


その晩、向かいの奥さんから「カーニバルのオークションサイトを覗いたら、マンゴーチャツネが1ケースで300ドル以上の値をつけている!」とメッセージが届きました。


その後数日間はこの奥さんとは「もう食べた?」「どうやって食べるのが美味しいか」というチャツネの話題で盛り上がりました。


さて「幻のチャツネ」を手に入れてから2週間が経ちますが、まだ誰からも「食べたよ!」という報告がありません。


私も含め「貴重すぎて食べられない」という貧乏性にとっては、瓶を開けることのほうが、手に入れる以上に至難の業なのかもしれません。

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