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キャロルの庭

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2019年1月の記事一覧

キャロルの庭 vol.8

いちこ、遅いなあ。
東雲先生はもう何杯目か分からないアルコールの入ったグラスをもてあそびながら、ひとりごちる。
「どうしたんでしょうね。読みふけってるのかな。」
店内の客数はまばらになりつつあった。調理の時間よりも洗い物の時間の方が少しずつ増える。あとでハンドクリームを塗らなければ。
「様子、見てきてくれない?」
「私がですか。東雲先生が行けばいいじゃないですか。」
「だって俺、もう歩けないし。」

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