マガジンのカバー画像

キャロルの庭

10
運営しているクリエイター

2018年9月の記事一覧

キャロルの庭vol.7

若い男女がふたりきり。
まあ、なにが起きてもおかしくはないと言えるが、はてさてどうしたものか。
自身が招いた結果なので文句の言いようもない。

「なんか、その、すみません。」
目の前の女性は言う。あの作家先生の担当とか言ってたっけ。
「いえ、自分もなんか、その、申し訳ないです。こんなところに、」
閉じ込めてしまって、と言いかけたが、果たしてそれは正しいのだろうか。
閉じ込めた、というよりも、二人し

もっとみる

キャロルの庭vol.6

死してもなお死んだ人はどこへ行くのだろう、と純平は考える。
魂だけがこの世に残ってしまうのだろうか。そうだとしたら、天国とは一体なんのために言い伝えられているものなのだろうか。肉体は概ねほとんどの宗教と社会通念で処理されてしまうが。
死してもなお、残るもの、遺るもの。それは死んでしまった本人には分からない。俺には何も、分からない。
今日も暇だったなあ、とあくびをひとつ、こしらえる。
なんで本屋、し

もっとみる

キャロルの庭 vol.5

俺の名前をなんというか、知っているか。

ここから先が出てこない。そもそも俺の名前を・・・だなんてずいぶんと偉そうだ。はたはたとキーを叩いては消し、叩いては文字を並べ、何度もカーソルが行ったり来たりする。そんな作業をかれこれ2時間は繰り返していた。画面上の物語はまだ1ミリだって進んじゃいないというのに。

一番苦手な仕事を後回しにするとこうなる。そんな自分をいちこは「ざまあみろ」という。後回しにす

もっとみる