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「母斑という地図」ごめんねという母に笑って言えたこと。

こんにちは、太ってきた琵琶です。
【 脱色素性母斑(だつしきそせいぼはん)】
というのをご存知ですか?

私の体には生まれつき、白い部分があります。
それは顎下から始まり、右胸、右背中、そして右腕へと、広範囲にあります。
完全に色が白いわけではなく、日焼けしなければ目立たない程度のもので、広がっていくものでもありません。

私はこれを疎ましいと思ったことはありません。

○私はこれを【白い地図】と呼ぶ。


うんと小さいときのことです。
「どうしてここだけ白いの?」と母に尋ねたことがありました。
そのとき母は、
「ごめんね。ママが上手に産んであげられなかったの」
と言いました。

決してそれを不満に思ったわけではなく。ただ「そうなんだ」と無感動に思いました。
本当にどうでも良いと、そう思っていたのです。あってもなくても何か影響があるのか?と。

ただこのとき、私の中に一つの真実が刷り込まれたした。

原因は母なのか。
ということ。
母が悪いとか、そういうことではなく、ただ純粋に母が原因だったのか。と思ったのです。

そして、中学に上がって最初のプールの授業のときのこと。友人から
「どうしたの? すごい日焼け!」
と言われ、日焼けなどした覚えもなく、不思議に思って腕を見ると、真っ白な模様が腕にあったんです。
ああこれか。と思った私は。
「生まれつきなんだ」
と答えました。すると友人は
「えーそうなの? 変なのー。嫌じゃない? 私も生まれつき痣があってさー」
と。
彼女のそれは、手の甲にあった丸い黒い痣でした。
彼女はそれが嫌で仕方ないのだということでした。

その時2つのことを思いました。
ひとつは
これは一般的にはあまりよくないもので、嫌がられるものだ。
ということ。
そしてもう一つが
そんなこと、母のせいでもないし、気にするようなことじゃない。
ということ。

だからその時私は考えて、

「嫌じゃないよ別に、だって地図みたいだし、面白いでしょ?」

と答えました。
我ながら、とてもこの言い回しが気に入ってしまったのです。

その日帰宅した私はその話を母にしました。
どうしても、この表現を伝えたかったのです。

しかし母の表情はあまりよくなく、そしてまた
「ごめんね」
と言ったのです。

ようやく私は、これを一番気にしているのはお母さんなんだ。と気づきました。
だから私は明るく笑って言いました。

「なんで?地図みたいで好きだよ。このへんとか、ちょっと離島になってるの。で、ここはリアス式海岸みたいでしょ?」

なんて言って見たんです。
すると母は、私が見せた手を覗いて

「ホントだね」

と笑っていいました。

すごくすごくホッとして。
そして同時に、この白い地図が本当に好きになったんです。
それからは、日焼けする夏になると、必ず目立つこの白い地図を指摘されるたびに、私はこう答えます。

「そうなの。地図みたいで素敵でしょ?」

と。
はたして母は、この痣を好きになってくれたでしょうか。
この白い地図を好きだという私を信じてくれたでしょうか。

私は今も、母が罪悪感を感じていた。ということがとても、悲しいのです。



○脱色素性母斑


この【脱色素性母斑】とは、生まれつき体にでている白い痣のことなんです。
胎内にいるとき、黒い色のもとであるメラミンを作る色素細胞が部分的に少なかったり、あるいはうまく作られなかったりすることで、できてしまいます。
なぜそうなるのか、というのは、わかっていないそうです。

皮膚科によると【色素性異常】の分類になります。
【白斑】なども同じものですが、白斑にはたとえば【尋常性白斑】など、後天的に発生し、範囲が広がっていく進行性の病気があります。
そうしたものとはすこし異なって、外見以外では、なんら害にもならないものなのです。


○母斑について罪悪感を感じること。

私の母のように、罪悪感を感じている人いませんか?
たしかに、もし、顔にあったら。
もし、もっとはっきりとしていたら。
私も気になっていたかもしれません。
私が母親だったら、子供に母斑がでたら気にするかもしれない。

人によりけりだから、気にしなくていいんだよ。なんてお母さんたちに言う資格は私にはないです。

でも、私が母斑を好きと言えたのは、お母さんが大好きだったから。
そして、小さい頃を、そんな外見を気にしないで生活できる環境にいたから。

だから、母斑を子供にとって嫌なものと決めつけないであげてほしい。
そしてそれがたとえ自分の子供になくても、母斑というものがあることを、教えてあげてほしい。

そして、そういう生まれつきある体の痣が、決して悪いものではないと、子供たちは知ってほしい。

多くの人がそれを悪いものじゃないと、【個性】なのだと思えたら、きっとずっと優しい世界になると思うんです。


偉そうなこと言ってるかな。
言ってるかも。
でも私はそう思うんです。

この夏もね、私の白い地図は鮮やかですよ。